ショッピングは「趣味」かー美容と万博と時々百貨店。マーケティング事始め
ショッピングは趣味か
「私の趣味はショッピングです。宜しく」
と、彼女は言いマイクを次の人に渡した。大学入学後の、新入生オリエンテーション・キャンプへの道中の話だ。学生と教員が何グループかに分かれてバスにのり、1人ずつ自己紹介をしていた。僕も含め、一通りの学生達が自己紹介を終えた。すると、当時学部長で宗教学を専門としていたジョージ・ルーカスにちょっとだけ似てる教授がマイクを持ち、こう言った。
「皆、自己紹介ありがとう。色々な人が一緒の学部でこれから学べるのが楽しみだね。ところで、ショッピングが趣味、という人が何人かいたけどあれはどういう意味だろうね。音楽とか、映画とか、スポーツが好きってのはわかるけどショッピングって趣味って言えるのかな?まぁ、時代が変わってるって事なのかもねぇ」
マーケティングを学び始めて
何を隠そう、実は僕自身も当時はこの教授と同じ意見だった。映画や音楽、哲学に興味を持っていた当時の自分からしてもショッピングは趣味とは言えないと思っていた。学部でとる授業ももっぱら人文学ばかり。経済関連の授業には一切興味を持たず、ある意味世間のことも「経済」のこともちょっと舐めていた。もう10年も前の話だ。社会人になり、一人暮らしを始め仕事につくと、自分がいかに世間知らずだったかを思い知った。お給料を貰って生きていくのも簡単ではない。
時も流れ、最初に勤めていたファッション・ブランドの仕事を辞め、昨年末からマーケティングの仕事を始めた。周りでマーケティングや広告関連の仕事をしていた近い友人達には、僕の好奇心旺盛な部分はマーケターに向いているよ、と言われていた。だが前述の通り、大学ではマーケティングの授業はおろか、経済系の授業はまともにとっていなかった自分は何がなんだかわからず、転職のタイミングで初めてコトラーを読んだくらいだった。外資系の広告代理店(正確には、英語ではマーケティング・エージェンシーという為、いわゆるテレビCMをバンバン作る、という感じとは違う)で働き始め、今は仕事をしながら自分でもたくさんマーケティング関連の本を読み込んでいる最中だ。この作業はいわば、マーケティングという言語を脳内にインストールをしている段階とも言える。そしてこのブログは、マーケティングの本や資料を読み漁っている中での自分なりの気づきを整理しシェアする為に書いているとも言える。ゆくゆくは、自分が元々強みとしていたカルチャー関連の知識✖︎マーケティングの掛け算で新しい発見を発信して行きたいが、まずは冒頭の話に戻ろう。そう、10年を経て「趣味はショッピング」という彼女の発言の意味がやっと理解できたということをシェアしたい。
万博と百貨店
僕たちが街中のスーパーや、ファッション・ビル、百貨店などで当たり前にする「ショッピング」の起源は19世紀後半〜20世紀前半の話だ。意外と歴史的には短い。ロンドン、パリ、ニューヨークを中心に人とお金が集まった当時は「ショッピング」は上流階級の人達だけに許された特権だった。そう、この頃僕たちが知っている百貨店という物の土台ができたのだ。重厚な建物、季節ごとに変わる派手なショーウィンドウ、高級ホテルにも近いようなスタッフの佇まい、ガラスケース内に並べられた色とりどりの美容品、商品や客層によって仕切られるフロア構成、そして何よりも世界中から集められた珍しい品々など。これらは基本的は世界初の万博を行ったロンドン万博とそれに続いたパリ万博の影響を受けている。当時、世界中に植民地をもち帝国として圧倒的な力を持っていたイギリスとフランスは自らの力の強さを見せつける為に国を挙げて打った一大イベントが万博だった。
美容業界の誕生
この百貨店全盛期の時代に、今の美容業界の土台がパリで生まれた。リンメル、ゲラン、コティ等が香水ビジネスを始めたのが美容業界の起源と言われている。香水のボトルはバカラや、ルネ・ラリックによる1つの工芸品であった。また、シャネルやディオールがオートクチュールのデザイナーとして活躍したのもこの頃で、まだまだ一部富裕層にしか手は出せなかったが、香水や服が「買える芸術品」となった。僕たちが今も知っている老舗美容ブランドやファッション・ブランドの多くはこのころから続くブランドである。注1)注2)
フォードと中流階級
一方、ヨーロッパから海を挟んだ大陸アメリカでは、フォードが自動車の量産を始めていた。富裕層相手の手作りの自動車よりも、安価で大量に作れる自動車がアメリカで出回っていた。このころから、"buy now pay later"「今買って支払いは後で」という月賦販売の制度もアメリカで広まった。(20年代当時は自動車の60%が月賦で買われていたそう)
ショッピングの娯楽化
ショッピングモールの原型ができたのも1920年代アメリカ、と言われている。郊外に位置し、遊園地とも見紛うような世界観の演出、車が入れず歩行者が歩くことを前提とした設計などが人々の心を掴んだ。ヨーロッパで建前上の階級制度が崩れ、アメリカでは本格的な中流階級の勃興が始まった時、「ショッピング」そのものが娯楽になり始めた。
ショッピングとマーケティング
冒頭の「ショッピングは趣味か」という問いに戻ろう。ショッピングが娯楽である以上、映画や音楽といった娯楽同様、それらを楽しむ行為が「趣味」であることは否定できない。むしろ、その「趣味」を低俗などと侮ってる場合ではなく、その「趣味」を巡って途轍もない頭脳が世界中で使われている。その頭脳がマーケティングだ。マーケティングとは消費者理解の知見だ。作り手のこだわりだけでなく、消費者が何を求めているか、どうしたら企業は消費者を手助けできるかを理解し、手助けのためにどう実行するか、そして最終的にはどうすれば企業の売り上げを伸ばせるか。マーケティングとは商品を作った後の宣伝活動だけでもなく、広告だけでもなれば、市場調査だけでもないということがやっとわかってきた。(これらはあくまでも手段)
要するに、マーケティングとは10年前には理解できなかった「趣味はショッピングです」という人の感情を理解できなければ務まらない仕事でもあるし、ある意味終わりも正解もない常に改善を求めていく必要がある作業でもある。陳腐な言い方であるが、「左脳的なロジックと、右脳的なマジック」が両輪で回らないと前に進まないという意味では物事を幅広い視野でみる必要もある。かといって、マーケターはエンジニアやデザイナーといった具体的な手に職をもっている訳ではない。マーケターは「何にでも首を突っ込むくせに、1人じゃ何もできない」という側面もある。それでも「趣味はショッピングです」を理解できるプロは特に日本ではこれからますます必要とされている、と現場の第一線で活躍するマーケター達が口を揃えて言っている。(元USJ、CMOの森岡毅さんや元マクドナルドCMOの足立光さん等)低価格高品質、スペックやこだわり偏重の商品作り、マス広告偏重のコミュニケーションなどと日本の大企業の多くは人口が爆発的に増え、勝手に消費者が物を欲してくれた時代の体質から抜け出せないでいる。これからの時代は「物と情報は多いのに、時間は足りない」という時代になる。すると、消費者と企業を結ぶマーケティング思考がより重要になる、と。
このブログでは、そんなマーケティングについて元・ど素人だった僕が少しずつ学んだ事を書いてシェアをしていきたい。マーケティングに興味がある人たちの為になれば本望です。明けましておめでとうございます。
注1)オートクチュールからプレタポルテのファッションの歴史に興味がある方は僕のこちらの記事も是非どうぞ!
注2)美容・化粧品業界のみならず、マーケティングに少しでも興味がある方にオススメのビジネス歴史書。骨太な読み応えですが、フランスやアメリカや日本も含めた多くの美容ブランド設立の背景と創業者の人となりも描かれていてとても面白いです。
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ロンドンの有名百貨店セルフリッジを作った、ミスターセルフリッジのドラマ。Netflixで配信してたのですが、今は残念ながらDVDのみのようです。ミスターセルフリッジの破天荒な起業家っぷりと、百貨店というシステムが出来上がるのを映像で追体験できる貴重なドラマですので是非。
正月、ということで初詣に行かれた方も多いと思いますが、それも実は鉄道会社によるマーケティング企画ということは僕の過去のブログで紹介してます。
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星野源も憧れる才能、ドナルド・グローヴァーによるドラマ『アトランタ』
突然ですが、ドナルド・グローヴァーをご存知ですか?
今ポップカルチャーの中で最も勢いと人気のあるアメリカ人クリエイターのドナルド・グローヴァー。彼が主演・制作(一部では監督や脚本も)を手がけている大人気かつ超重要作のコメディ・ドラマ『アトランタ』が遂にNetflixで配信されたのでドラマの感想も含めてご紹介します!
ミュージシャン、チャイルディッシュ・ガンビーノとして
恐らく日本では彼の別名、チャイルディッシュ・ガンビーノの方が有名でしょう。
僕も彼のアルバムAwaken, My Love!というアルバムの方で先に知りました。
今夏に公開されたシングル曲「This is America」のMVが世界中で話題になりましたね。ここ日本でも様々なミュージシャン達が話題に上げていました。
この曲は過激なメッセージとパフォーマンス、そしてポップなサビと突如転調してダークな雰囲気になる独特な楽曲が印象的ですね。
実は彼、ドラマもイケてるんです。
俳優、ドナルド・グローヴァーとして
チャイルディッシュ・ガンビーノは彼のミュージシャンとして活動する時の名義で、俳優・コメディ業をする時にはドナルド・グローヴァーとして通しています。最近だと『ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー』にも出ていましたね。
この映画はコケてしまいましたが、彼の演技は良かったという感想。ミュージシャン・俳優・コメディもこなしている、という点では日本だと星野源が近いでしょうか。と思ったら星野源もやっぱりドナルド・グローヴァーのこと、追っかけてるみたい。ちなみに星野さん、それだけ最先端を追っかけてるなら早くapple musicかspotifyに配信してくださいな。
星野源がラジオで語る‼︎源さんがチャイルディッシュ・ガンビーノの新譜を大絶賛‼︎
ドラマ、『アトランタ』
さて、そんなドナルド・グローヴァーが手がけるコメディ・ドラマがやっとNetflixで配信されました。前回Huluで配信されたときは本当に2週間くらいの限定だったので観れた人もかなり少なかったようです。僕をはじめ、洋画ファンがnetflixにリクエストをし続けたのが届いたのでしょう、シーズン1だけですがとりあえず観れます!舞台はアメリカ南部、ジョージア州アトランタ。実はこのアトランタ、最近のヒップホップの一大トレンド、トラップというスタイルの発信地でもあり、MigosやFutureといった新たなスターも多く誕生しています。
ヒップホップやトラップのイメージが先行すると、いかついイメージが強いですがドラマ『アトランタ』はシュールでポップで笑えます。
ドナルド・グローヴァー演じるドラマの主人公、アーンはプリンストン大を休学して地元でフラフラしているという設定です。奥さんも子供もいるのに、定職がなく家賃も払えない為ホームレス状態。そんなときに今話題のラッパー、ペーパーボーイとして活躍する従兄弟の話を耳にし彼は思い立ちます。よし、俺をマネージャーとして雇ってもらう、と。ラッパーの従兄弟は出てきますが、ゴリゴリの音楽業界の闇を暴く、というドラマではなく、うまい具合の緩さがやみつきになるドラマです。
ツッコミ役で、みんなのリーダー的な太っちょラッパーの従兄弟、アルフレッド。ラッパーの時はペーパーボーイという名前。これもまた笑える。これまた人気爆発間違いなし、アメリカ版オダギリジョーとでもいいましょうか、シュールでお洒落で、何を考えてるかわからないダリウスというキャラクターがメインの3人。
左)アーン 右)ダリウス
ダリウスのスタイル、結構好きなので他にも貼っときます。笑
左)ダリウス 右)ペーパーボーイ
主人公が割と冷めた感じで周りと接していて、シュールな雰囲気もあってそれがまた笑える。アメリカ版ズッコケ3人組かと思いきや、村上春樹っぽさもあるドラマなのが魅力。
期待の若手日系監督、ヒロ・ムライ
チャイルディッシュ・ガンビーノ名義のMVでもタッグを組む日系の監督、ヒロ・ムライによる撮影も印象的です。時折差し込まれる街や風景の空撮や、ブルー系の色合いを強調する撮影が日常の中に少し幻想的な雰囲気が出るのですが、ヒロ・ムライは村上春樹が好きなようですね。とりあえず1話完結のものが多く、1話も30分弱と他の海外ドラマよりはとっつきやすいです。新旧のブラック・ミュージックの名曲がふんだんに使われるのも音楽好きにはたまらないですね。
チャイルディッシュ・ガンビーノでは上半身裸でやや過激なパフォーマンスが印象的ですが、ドナルド・グローヴァーとしては一歩引いた品のある雰囲気も出せます。テーマ、笑い、音楽、全てのバランス感覚の良さがずば抜けているクリエイター、ドナルド・グローヴァーによるドラマ、『アトランタ』。是非、ご覧ください!
このドラマに限らず、今ヒップホップがジャンルを超えて様々な分野で注目されています。あのApple史上最も高額な買収となったヘッドホンブランドを作った2人がヒップホップ界出身ということを描いたNetflixのドキュメンタリーがありますので是非こちらも読んでみてください。
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『ゲーム・オブ・スローンズ』の圧倒的世界観!音楽・衣装・言語の作り込みが凄い
先週行われた、第70回エミー賞授賞式。そこで作品賞を始めとする9部門を制覇したドラマ、『ゲーム・オブ・スローンズ』についてご紹介をしております。第2回目の今回は『ゲーム・オブ・スローンズ』の圧倒的な世界観について解説します!世界観を作るのに欠かせない音楽・衣装・言語の魅力をお伝えしましょう。 3回にわたってこの壮大なドラマについて紹介してます。是非第1回から読んで頂けると嬉しいです。
・その1『ゲーム・オブ・スローンズ』入門!登場人物3人の意外な共通点とは!? - 【ブログ】マーケターが追うポップ・カルチャー最前線
・その2『ゲーム・オブ・スローンズ』の圧倒的世界観!音楽・衣装・言語の作り込みが凄い - 【ブログ】マーケターが追うポップ・カルチャー最前線
・その3サラリーマン必見!?『ゲーム・オブ・スローンズ』が描く理想のリーダー像 - 【ブログ】マーケターが追うポップ・カルチャー最前線
音楽/ ラミン・ジャヴァディ
まずはこちらをお聞きください。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のオープニング・テーマ曲です。
前回もご紹介したように、『ゲーム・オブ・スローンズ』は中世ヨーロッパを模した架空の世界を舞台としています。この架空の世界で玉座を巡る大戦争や、異民族との対立や、ファンタジーの要素もあるドラマです。当然、音楽もその世界観に合う物が求められますよね。
そこで白羽の矢が立ったのがラミン・ジャヴァディ。上記の曲を始めとして、『ゲーム・オブ・スローンズ』の楽曲を手がけているのが、イラン系ドイツ人のラミン・ジャヴァディです。架空の世界の話ですが、中世をイメージしている、という意味ではクラシック音楽が登場する前、というニュアンスも含まれているのでしょう。異国の地の音楽も、ジャヴァディによる弦楽器の軽快なリズムによってオリエンタルな雰囲気が強調されます。 ラミン・ジャヴァディは既に数々の映画やドラマの楽曲を手がけています。
トム・モレロをフィーチャリングした『パシフィック・リム』の音楽や、
『ゲーム・オブ・スローンズ』と同じくHBO制作の大作ドラマ、
『ウェストワールド』の音楽も有名です。
こうやって彼の経歴を振り返ると、戦闘が多い映画やドラマで起用されることが多いようですね。弦楽器を使った、リフっぽい音の刻みも1つの特徴でしょうか。ラミン・ジャヴァディはオープニング曲以外にも、様々な魅力的な音楽で作品世界に彩りを与えています。ちなみにですが、ラミン・ジャヴァディの師匠はあの映画音楽界の大御所、
ハンス・ジマーというのもびっくり。
最近ではブレードランナー2049の曲や、
ダークナイトの曲も有名ですね。
ハンス・ジマーはもうどんなジャンルでも作曲できてしまうので、(『ライオン・キング』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』の曲も担当)比較してしまうのも悪いのですが、ラミン・ジャヴァディも今後どんなジャンルに挑むのかが楽しみです。
衣装
さて、『ゲーム・オブ・スローンズ』は衣装も魅力的です。
北部を統治するスターク家の2人。左は前回ご紹介したジョン・スノウですね。
右がスターク家当主のネッド・スターク。極寒の地ならではの、毛皮の使いの衣装が印象的です。一方こちらは首都の貴族の服装。
左の女性、サーセイ・ラニスターは如何にも贅沢な織りの生地使い、上流階級の人間らしい服を身にまとい、豪華なネックレスや髪型をしています。
こちらはディナーリス・ターガリエン。様々な場面で着るドレスが変わりますが、どれも印象的なシルクのような素材ですね。隣の大陸の遊牧騎馬民族の服装も見てみましょう。
ドスラク人と呼ばれる彼らは、草原を馬に乗って駆け巡る屈強な部族として描かれます。男は髪と髭を伸ばし、鞣した皮を防具・アクセサリーとして身につけいていますね。湾曲した刀もオリエンタルな要素が見られ、印象的です。このように、地域、身分、職種、キャラクターに応じてきちんと衣装から世界観を作り込むところも『ゲーム・オブ・スローンズ』の魅力と言えます。
言語
『ゲーム・オブ・スローンズ』はイギリスを模した架空の世界が舞台、ということもあり、基本的にキャラクター達はイギリス英語を話します。しかし衣装同様、キャラクターの出身地や、身分、役職などによってそれぞれの訛りで話すようになっています。北部出身のキャラクターはアイルランド系やスコットランド系の俳優をキャスティングしたり、兵士達は兵士らしい英語を話す一方、首都の貴族達は英国上流階級の話す英語、と棲み分けられています。また、先ほど触れたばかりの騎馬民族のドスラク人ですが、最初の数シーズンではかなりの頻度で登場します。彼らはドスラク語という言葉を話すのですが、この架空の民族の架空の言語を作るのに、ちゃんとした言語学者を雇ったようです。
ドスラク語 - Wikipedia ウィキペディアにはなんとドスラク語の単語、文法、発音までも記述されているという徹底っぷり。実際にキャラクター達がドスラク語を操るのを見ていると、本当にこんな人達がいるのではないかと思うほど、世界観がきちんとしています。
まとめ
以上、『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界観(音楽・衣装・言語といった部分)についてのご紹介でした。わかりやすいCGだったり、大物スター俳優のギャラといった部分だけでなく、細かいディテールの部分にもきちんとお金と時間をかけているのがわかりますね。 脚本家の倉本聰は「大きな嘘はついても、小さな嘘はつくな」と言っていました。『ゲーム・オブ・スローンズ』はファンタジーという大きな「嘘(フィクション)」ですが、この大きな嘘に説得力を持たせる為に、世界観作りでも徹底的にお金も時間もかけてるのがこのドラマの魅力だと思います。ここまで、『ゲーム・オブ・スローンズ』の魅力を語ってきましたが、僕個人の一番魅力だと思うポイントはまだ語れていません。
それでは次回、完結編でお会いしましょう。
ちなみに、 『ゲーム・オブ・スローンズ』で豪傑なスタニス・バラシオンを演じる、スティーヴン・ディレイが出ている映画『ウィンストン・チャーチル』も役者や服装などの作り込みが凄いので興味がある方はぜひ!michischili.hatenablog.com
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極寒世界の渋いオヤジの戦い。カーハートが印象的な『ウィンド・リバー』
2018年日本公開ーテイラー・シェリダン監督
暑苦しい夏にぴったり、「恐ろしさ」なんて言葉では形容できない自然(この場合雪)を畏怖する気持ちになる隠れた名作。観れる劇場が少ないのが玉に瑕。
是非口コミで広まって欲しい。アヴェンジャーズで共演しながらも、あまり活躍の場がないジェレミー・レナーと、エリザベス・オルセンの本領をこの作品では観れます。
とにかく撮影が素晴らしい。雪原の厳しさと時折見える美しさを広角でしっかり撮る一方、人や車が移動する時は、遠くから誰かが監視してる様に望遠で撮ってる。
テイラー・シェリダン、これが長編監督デビュー作って信じられないくらい老練さを感じました。
また、ニック・ケイヴによる啼きの弦楽器の劇伴が、観る者に優しく手を差し伸べてくれます。(彼も子供を亡くしている)
Wind River (Snow Wolf original soundtrack) by Nick Cave & Warren Ellis
「運」では生き抜けない、それほど過酷な環境の中でもしっかりと生きようとする人間達の強さがラストの余韻として残る。同年に公開されたスリービルボードも似たテーマ(アメリカの田舎、少女の殺害、人種問題など)を描いているけど、断然こっちの方が映画としての完成度が高い。やっぱ監督・脚本のテイラー・シェリダンはセンスある。比較して観ても面白いかも?
P.S.
いつか自分もカーハートが似合う渋いオヤジになりたい。
ルイ・ヴィトンの新デザイナー、ヴァージル・アブローって誰?
街中で皆様見かけた事は一度くらいはあると思います、このブランドoff white。高級ストリート・ウェアというコンセプトで若者に人気のブランドです。
この度、Off-Whiteの設立者であるヴァージル・アブロー(以下、ヴァージル)が、前任者キム・ジョーンズに代わり、ルイ・ヴィトン・メンズウェアのアーティスティック・ディレクターに就任しました。 Off-Whiteのデザイナーというのは知っていたものの、それ以外はあまり彼の事をそこまで知らなかったので、この際調べてみました。
このニュース、単なるファッションの話題に見えますが、このニュースの背景を理解すると、ポップ・カルチャーの最前線が見えてきます。ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、ジャンルを跨いだ新しい交流が怒涛のように生まれています。ヴィトンやラグジュアリーブランドのマーケティング的視点から考えると、ヴァージルの起用はブランディングの一環とも捉えられますね。ではヴァージルって何者なんでしょうか?
はじめに
長らく更新が滞ってしまいましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?これまで映画でファッションを解説する、という視点でブログを書いてました。とは言え、自分の興味や守備範囲が広すぎる。この際、ポップカルチャー全般✖︎マーケティングのガイドマップのようにしよう、という事でリニューアルをしました。もっと言うと、最前線のポップカルチャー≒最前線のクリエイティブな人の集まりとも見れます。最前線を追いかける人の参考になれば、と思います。
ヴァージルと現代アート
ヴィトンのクリエイティブ・ディレクター就任に先立ち、ヴァージルが3月16日より広尾で初の個展を開催してました。という事で、今日会期終了ですが先日駆け込んできました。この広尾にあるカイカイ・キキ・ギャラリー、現代アーティストである村上隆氏が運営してるギャラリーです。こちらはヴァージルと村上の共同で展覧会を開催した時の画像。
注)真ん中はジャスティン・ティンバーレイクです。
村上氏曰く、「ヴァージルは単なるデザイナーではなく現代アートにも通じる物作りをしている」との事でした。展覧会を見た限り、正直「現代アート」として評価されるのかちょっと疑問を持ってしまいましたが、「消費社会」への言及と「企業ロゴ」の多用はある種、現代的だな、と思いました。ちなみに村上隆と言えば、日本画をルーツにしながら花柄のキャラクターやドクロなどをモチーフに描く事で国内より海外で人気のアーティストですが、村上隆も実はLVと仕事をしていました。
ヴィトンではここ数年、積極的に外部のデザイナーやアーティストを起用した限定商品の企画を行なっています。こういった積み重ねの上で、外部のクリエイターの起用が効果的であると判断されたのでしょう。限定商品だけでなくメンズウェア全体の責任者としてヴァージルが選ばれた理由にはこういう背景もあるようですね。
ヴァージルと音楽
ヴァージルは現代アートだけではなく、音楽業界にも大きな繋がりがあります。カニエ・ウェストというヒップホップ・ミュージシャンを皆様ご存知でしょうか。
左)ヴァージル・アブロー
カニエ・ウェストは2000年代〜今に至るまで、ヒップ・ポップのみならずポップ・ミュージックの世界では最先端の音楽を作る事で知られています。本人自身ラップをしたり歌ったりしますが、彼はソウル・ミュージックをサンプリングした甘く、どこか懐かしさを感じさせるトラック(曲)作りに定評がありました。デビュー以降も様々な音作りにチャレンジしているクリエイターです。
ヴァージルとカニエは同じシカゴ出身。しかも2人ともフェンディにてインターンをしていました。ヴァージルは以前カニエの設立したファッション・ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めていました。そして今では幻となってしまいましたが、カニエもヴィトンとコラボレーションをしていました。
そしてカニエの、3枚目のアルバムジャケットを手掛けたのは、そう村上隆です。
最先端の音楽と現代アートもこういう風に有機的に繋がっているんですね。
ヴァージルと建築
ヴァージルはところでどこでデザインについて学んでいたのでしょうか。調べると、アメリカのイリノイ工科大学で、建築を学んでいました。そこでレム・コールハースに学び、プロダクトのコンサルティングも学んだそうです。このレム・コールハースは建築界では建築家の建築家とも言えるような存在で、徹底したリサーチから提案される新しい建築の在り方は建築家だけでなく多くのクリエイターにも影響を及ぼしています。
そしてコールハースはヴィトンとは競合に当たる、プラダのマーケティングに長年携わっています。具体的にはミラノコレクションの会場設計や、プラダ財団や一部店舗の設計も手掛けていますし、プラダのプロジェクトをまとめてこんな本も出版しています。
Rem Koolhaas: Projects for Prada
- 作者: Rem Koolhaas,Miuccia Prada,Patrizio Bertelli
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- 発売日: 2001
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建築側の視点ですと、こちらの美術手帳に掲載されているヴァージルのインタビューがより詳しいです。ファッション・ブランドのインテリアデザインについて詳しい建築家、浅子佳英さんがインタビューをしておりまして、こちらも勉強になります。
ヴァージル・アブローが語る自身の「DNA」。世界初個展「”PAY PER VIEW”」で見せるものとは?|美術手帖
最後に
いかがでしたか?このように、ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、様々なジャンルを超えて新しい交流が生まれています。そして多くのグローバル企業のマーケティング企画ではこう行ったポップ・カルチャーやストリート・カルチャーの人間に仕事を依頼するケースが年々増えています。日本だとまだまだヒップホップを身近に感じられず、聞き慣れていない人もいるようです。今後このブログでは、ポップ・カルチャーがいかに様々な分野のクリエイターや企業のマーケティングと繋がっていくのかを紹介していきたいと思います。
興味がある方はこちらの記事もどうぞ!ヒップホップ発のヘッドホン・ブランドが、Apple史上最高額で買収されるに至った経緯を描いたドキュメンタリーを紹介してます。
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シーズン性がある異色の古着屋、Ambivalence
代官山の新名所。古着屋Ambivalence
師走ですね。
4月以降の更新となってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょ
映画もいくつか観ましたが、今回はとあるお店をご紹介致します。
Ambivalence
音楽だけじゃない!『ラ・ラ・ランド』は開襟シャツとスペクテイター・シューズも魅力的!
はじめに
そもそも開襟シャツとは?
開襟シャツのもう1つの特徴ですが、
開襟シャツ
シャツの起源
スペクテイター・シューズ〜または、コンビ・シューズ〜
ジャズ・ファッション〜フランク・シナトラの場合〜
フランク・シナトラ-1943年の写真
ジャズ歌手、ミュージカル俳優、そして当時のアメリカを代表する大スターにしてアイドル、フランク・シナトラの写真です。セブが崇拝してる部類のジャズミュージシャンではないですが、開襟シャツと、靴もうっすらとですが、2色使いになってる写真をみつけました。とういうことで、前編後編に分けてお送りした『ララランド』特集、いかがでしたか?色々な意見があるラ・ラ・ランドですが、僕は楽しめました。舞台ミュージカルの映画化や、ディズニー映画ではない、オリジナル作品なのに世界中で大ヒットを連発。しかも製作は、ワーナーや20世紀フォックスなどのハリウッド6と呼
音楽だけじゃない!色使いも魅力的、映画『ラ・ラランド』
ララランドの色使い
ミュージカルのオマージュ
日本映画の影響
東京流れ者のワンシーン。
ちなみに先日亡くなってしまった鈴木清順監督はタランティーノ、ジム・ジャームッシュ、ウォン・カーウァイ、パク・チャヌクなどにも影響を与えていますね。いわゆるB級映画とも呼ばれますが、鈴木清順の独特のセンスは、もっとメジャーな、『アニメ版ルパン三世』にも受け継がれてます。鈴木清順はルパン・テレビシリーズの監修も務めていたそうで、制作現場では宮崎駿とのバトルも頻繁にあった見たいです。そのバトル、見て見たい。笑
1985年公開、鈴木清順監督。
テクニカラー
さて、話を戻しましょう。『ララランド』はたくさんの映画を参照しただけあって、衣装を含む美術がいいですね。と思ったらアカデミー賞美術賞を受賞してました。(衣装賞はファンタスティック・ビーストでした) さらに、『ララランド』は上記にもあるようなミュージカル映画の雰囲気を再現するために、あえてフィルムで撮影したそうです。実は劇中の歌の中でもテクニカラーというが歌詞に出てきますね。(テクニカラーはアメリカのカラーフィルムの企業と技術の名前です)
個人的にはそこまでカメラワークはビックリしなかったのですが、アカデミー賞撮影賞も取ってます。第86回、87回、88回と3年連続でアカデミー賞撮影賞を受賞したイマニュエル・ルベツキと比較すると、今作はそれほどかな?とやや疑問ですが、ここは専門外なので詳しい方いたらご教示いただけると幸いです。 そういえば、87回のアカデミー賞作品賞の『バードマン』に出ていた頃のエマ・ストーンと比べると、ラ・ラ・ランドのエマ・ストーンは本当に綺麗になりましたね。まぁ、役柄とメイクのせいもありますが、随分大人っぽくなりました。
『バードマン あるいは無知がもたらす予知せぬ奇跡』アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、2014年公開。アカデミー賞助演女優賞ノミネート。 似たアングルのこちら。本作では、アカデミー賞主演女優賞を受賞しましたね。
ということで、色使いに注目した前編でした!まだ観てない方、後編を公開する前にも、まだまだ劇場で観れますよ! 『ララランド』紹介記事の後編ではライアン・ゴズリング演じる、セブ役のファッションについて書きます。乞うご期待!