『ゼロ・グラビティ』のキュアロン監督最新作。映画『ROMA/ローマ』
撮影も配信も最先端な映画『ROMA/ローマ』。観終わった後に、写真を撮りにこう!と創作意欲を掻き立てられました。あー、あの空が本当に美しい。キュアロンが今回もまたやってのけてくれました。
ローマの思い出
映画『ROMA/ローマ』の舞台はキュアロン監督が生まれ育った1970年代のメキシコシティ内のローマという地区。大家族の中の息子として育った彼は、住み込みのお手伝いさん達に囲まれていました。今作はそのお手伝いさんの女性を主役にした「思い出」と家族の「再生」を描いています。
風景写真のような映像
映画の冒頭からじっくりと見せる床の掃除、キュアロン十八番の長回しで映される家の中、ドリーで撮る街中の移動などなど。とにかく撮影が今まで観たことの無い世界を写してくれているのが嬉しい。市内でも、大自然の中でも引きの画が大半を占めている表現がまた新鮮。ここまで細かい部分までフォーカスが合っているのは、さながら巨大な風景写真のよう。それでも『ROMA/ローマ』が彼個人の単なる「思い出」話に止まらず、皆が共感できる「映画」になったのは、風景写真に柔らかい感触を残したからかもしれない。
『ROMA/ローマ』は撮影も配信も最先端!
今回はキュアロン監督自身が撮影監督も務めたのも重要なポイントでしょう。Arri Alexa 65mmという大きなセンサーを持ったデジタルカメラを使って、白黒で撮る。フィルムで白黒で撮ると途端に懐古趣味になってしまうし、デジタルでカラーで撮ってしまうと最先端の表現になりすぎてしまう、と考えたのでしょうか。しかも配給は昔ながらの映画配給会社ではなく、Netflixでの全世界同時公開。作って終わりではなくて、配信のあり方からも今後の映画のあり方について一石を投じて、大きな議論を巻き起こしたのも記憶に新しいですね。やること粋すぎますよ、キュアロン御大!
再生を描く監督、キュアロン
『ROMA/ローマ』では、
タルコフスキーのような水や炎の象徴的な映し方もあれば、フェリーニのような音楽隊や動物が出てくる庶民的な映し方もあるのに、市街戦?のような緊迫感を出せるのも流石キュアロン!という感じ。
そういえば、『トゥモロー・ワールド』でのあの長回しにしろ、『ゼロ・グラビティ』での宇宙での浮遊感にしろ、キュアロンは昔から新しい「映画」作りをしてきた人だっけ。前2作でも、今作でもキュアロンって「再生」を描きたい人なんだなと思った。
あ、そういえばハリポタ3もある意味時間を遡って自信をつけるハリーにとっての「再生」の話なのかもしれないなぁ。(今作で水や炎の象徴的なショットがお気にりになった方は、ナウシカの元ネタの1つでもある、映画『ストーカー』もオススメ。ロシアの巨匠、タルコフスキーによる詩的なSF映画です。)michischili.hatenablog.com
(または、音楽隊や、街中の動物がわちゃわちゃした感じが好きな方は映画『8 1/2』もオススメ。こちらはイタリアの巨匠、フェリーニによる「映画内映画」)
とりあえず、『ROMA/ローマ』は白黒なのに絶妙な濃淡で描かれているのでとても豊か。カラーじゃないからって敬遠せずに是非観てね!あーそれにしても海と、家から見えるあの空が忘れられない。写真撮りに行こっと。
『ROMA/ローマ』ティーザー予告編 - Netflix [HD]
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