眠くなるけど美しい。映画『ストーカー』はナウシカの元ネタにもなった
やっと見れました、ロシア出身の監督タルコフスキーによるストーカー。
1979年の映画ですが、国内ではなかなかレンタルができなかったところに最近やっとDVD化されてツタヤで借りられました。
念の為ですが、この「ストーカー」とは、帰り道に自分の後をつけてくる、あの危ない人のストーカーではないです。本来は「獲物を狩るハンター」という意味合いが強かったみたいです。
とりあえず、あらすじから。
【あらすじ】
ある村に隕石が落ちた。その村は焼け、多くの人が犠牲になり政府はその村周辺を立ち入り禁止の「ゾーン」と名付けた。
厳重に警備されたゾーンの中心にはどんな希望でも叶えてくれる「部屋」があるという。そしてその部屋を求めて「ゾーン」に立ち入ろうとする者がいるが、生きて帰ってこれた者はほとんどいないという。
物語は、このゾーンの中に精通しているゾーンの道先案内人(「ストーカー」)のもとを「科学者」と「小説家」が訪ね、ゾーン入りをするところから始まる。
三人は無事ゾーンに入れるのか。
そして希望の「部屋」に辿りつけられるのか。
ゾーンの正体とは。
【感想・考察】
まず、この監督の映画は眠くなります。
この監督は惑星ソラリスを最初に見たのですが、そちらもかなり眠くなります。
それよりは個人的にはストーカーのほうがよかったです。
(今見直したらソラリスもよく見えるかも)
というかストーカーはかなり好きな映画です。
眠くなる理由:
・セリフが少ない
・セリフがあったとしても、抽象的な言葉が多い
・長回しが多い(映像をゆっくり、じっくり見せることを重視している)
と、手放しに絶賛できないですし、誰にでも勧められる映画ではないです。
でもこの眠くなる要素も含めてこの映画は強烈に印象に残るんです。
で、演出で面白かった点。
【演出メモ】
①モノクロで描かれた「現実」世界
物語の冒頭はモノクロにちかいセピア調の色で始まります。
そしてこのセピア調の色合いは現実世界(ゾーンの外側)を描くときに使っています。
そして冒頭ではストーカーの奥さんが怒ってるんですね。
「あんたまたあそこに戻るつもり!?また牢屋に入りたいの?」
「ろくな夫じゃないからろくな子供も生まれないじゃないの」
(娘は足が不自由で喋ることもできないみたいです)
みたいなことをいってかなりくらーい雰囲気でスタート。
そしてこの部分が割と長い。
こんな感じ。
でもこの描き方をすることで、この街の匂いや湿っぽさも伝わってくるような効果があるんです。写真家でいうと宮本隆司という廃墟や建築を撮る人に似てる。
②「ゾーン」内で一気に花開く色彩
くらーい重い雰囲気でスタートする映画ですが、「ゾーン」内にやっと入ると画面は一変。色彩が一気に花開き!
と思いきや、確かに綺麗なんだけど、ゾーンは廃墟と化した村なのでどこか寂しげ。
でもどこかに懐かしさや暖かさが感じられました。
さて、冒頭では頼りなさそうな人物として描かれていたストーカー。いざゾーンに入ると急にイキイキし始める。ストーカーにとってはゾーンが「現実」なのかもしれないですね。
③不思議な画
ゾーンの中で「部屋」にたどり着く直前のシーン。
具体的にどんな場所か忘れてしまったけど、この画を見て、とても宮崎駿っぽいと思った。ナウシカの腐海やもののけ姫のシシガミの森とか。(もちろん、シシガミの森は屋久島の森がモデルになってるというのは知ってます。)
まぁ過去のインタビューで宮崎さんはタルコフスキーに言及してるので、少なからずこの映画の影響は受けてるのでしょう。
④ゾーンから帰還した後の「現実」の描き方と娘の変化
と、ここは物語の核心だと思うので見てからのお楽しみに。
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SFのような設定だけど、最先端の機械は全く登場せず、(最後のあのシーンだけ特別)むしろ機械や文明が朽ちた世界をタルコフスキーはよく描く。
これは侘び寂びのような美意識にも通じる気がします。坐禅のような理性では捉えられない部分もあるかも。
という意味では眠くなるのも、もしかして計算済みなのかもしれない。観客の意識が朦朧として、映画のシーンがもやもや見えるようにしてる。眠い時に心に響くものがある?
ちなみにこの白黒がカラーに変わるという演出は僕の好きな押井守が監督した実写映画のアヴァロンでも引用されてます。
シンドラーのリストでも白黒に効果的に赤を足したりしてたかな。
あと、ヴィム・ヴェンダースのベルリン天使の詩でもやってたか。
チェルノブイリ原発事故を予言するかのような描写など、文明批判の要素もありますが、それより人間に対する暖かさがあるのかなーと思いました。
アヴァロンの話や、タルコフスキーがやっとレンタルできるようになった話、(コンテンツと流通の話に繋がります)など、この映画からさらに話を広められそうですが、眠くなってきたので寝ます。
ということでまた次の機会に。