ヒップ・ホップ誕生を描く、Netflixドラマ『ゲットダウン』
プーマのスウェード・クラシックが印象的に使われている『ゲットダウン』。実はこには理由があるんです。今回は、Netflixが製作したヒップホップ誕生の物語を描くド
ブロンクス生まれ、プーマ育ち
舞台は1977年ニューヨーク、ブロンクス。当時は街中には貧困が蔓延り、
初期ヒップホップとスニーカー
michischili.hatenablog.com さて、ドラマは77年から数年間(第2シーズンでどれくらい進むかにもよりますが)を描いてますが、少し先に進んでみましょう。RUN-DMCによって一気にメジャーな音楽の仲間入りを果たしたヒップホップですが、当時はまだまだアフリカ系、またはヒスパニック系の文化というイメージが強かったです。 そんなイメージをこのグループが壊します。
『ゲットダウン』の魅力とは?
彼女はキリスト教の牧師を父に持ち、教会で聖歌を歌っていますが、ディスコ・スターになり、この貧困の街から出たいという夢を持っています。しかし、厳格なペンテコステ派の牧師の父からは、ディスコは悪魔の音楽だ、と断固反対されます。ディスコ音楽と教会音楽という部分もきちんと描いているのはとても勉強になります。アメリカのミュージシャンで聖歌隊出身の人は非常に多い点から、その背景を観れるのは日本に住む僕たちにとってはとても新鮮だと思います。誰もが、エゼキエルの教養の深さを評価しているにも関わらず、彼は才能を活かしきれない。誰もが、マイリーンの歌声を評価しているにも関わらず、父がその才能を使わせてくれない。 この才能のある若者二人は時代の波にのまれてしまうのでしょうか?
このドラマ、ヒップホップ誕生物語でもありますが、若者の青春ドラマでもあり、弱者が夢を掴みとろうとするアメリカンドリームも描いてます。服の話からずれてしまいますが、ヒップホップ誕生と切ってもきれないグラフィティ(落書き)の文化もリアルに描いています。この夏公開されてからは、アメリカで大ヒットしたみたいですが、日本でも同じ公開時期に観れるのはいいですね。僕も寝る間を惜しんで一気見してしまいました。今回はスニーカーを中心に解説しまたしが、いかがでしたでしょうか?ちなみに未だにヒップホップとスニーカー(ファッション)の関係は切っても切り離せず、最近ではKanye West がAdidasと共同でプロデュースしているyeezyというスニーカーが人気だったりします。
無法地帯の若者達を潰しにかかる嫌な大人達と、
現状を憂いながらも、もっと良くしていきたい!と反発する若者達の熱血ドラマ。
ヒップホップ誕生の裏側は、小説よりも奇な血沸き肉踊る若者達の叫びの物語でした。どっちが勝ったって?それはもう皆さんご存知ですよね 本日も最後までご覧いただきありがとうございました。コメントの書き込み、その他SNSでのシェアなどして頂けるととても嬉しいです!それではまた!
スーツも建築もお洒落!トム・フォードの『シングル・マン』
お洒落映画といえば、これ。ファッション雑誌ポ◯イの表紙にの載ったこの映画、実は建築もかっこいいんです。
トム・フォードって誰?
この映画を監督したのは、実はファッション・デザイナーとして有名なトム・
トム・フォードとスーツ
建築もかっこいい。西海岸らしいガラス・ハウスとは?
光の差し込み具合だまたいい。建築もそうですが、インテリアや小物も60年代らしさを忠実に再現していますね。まさに神は細部に宿る。服も建築もこだわっているこの映画、デザインに興味のある方は是非観てください!ちなみに、以前紹介した映画、『マイ・インターン』もこの映画同様、クラシックなファッションの良い参考例です。『シングル・マン』はスーツと建築がメインでしたが、『マイ・インターン』は小物を中心に参考になる物がたくさんです!
ズートスーツって何!?映画『マルコムX』で学ぶチンピラスーツ
【ズート・スーツ】1940年代にアフリカン・アメリカン系ミュージシャンや、マフィアなどの服装としてよく見られたズート・スーツ。キング牧師と並ぶ有名な解放指導者マルコムXは、実は若い頃はズート・スーツを着るようなチンピラでした。今回は映画『マルコムX』を元にズート・スーツの解説をします。
ズート・スーツ
さて、マルコムXはきちんとしたスーツに身を包み、メガネをかけているインテリのようなイメージが強いですね。しかし、若い頃はやんちゃでした。やんちゃを通り越えてチンピラでした。その頃の服装がこれ。
またはこれ。
ちょっと暗くて2枚目はわかりにくいですが、解説をしましょう。
1940年代にアフリカ系アメリカ人のミュージシャンや、マフィアなどの服装としてよく見られたズートスーツ。
特徴としては、
・極端につばの長いハット
・極端に太いラペル(襟)
・極端に長いジャケット
・極端に太く、ハイウェストなパンツ
・極端な色、または柄使い
となります。
とにかく全てが極端ですね。
ヨウジ・ヤマモトとズート・スーツ
これ、今そのまま着たら目立ちますが、日本のブランドでこの精神を受け継いでるブランドがありました。
色や柄は落ち着いてますが、極端なシルエットはまさにズート・スーツですね。以上ヨウジ・ヤマモトの服でした。
映画、マスクのジムキャリーの服装もズート・スーツ。そしてこちらは2016年10月発売のGRINDという雑誌の表紙。
気だるそうな表情に、大きいサイズのジャケット、シャツはインしてハイウェストパンツ、そしてつばは広めです。この手のつばの広いハットは一時期とてつもなく人気がありましたね。僕の職場ではよく見かけましたが、そろそろこの流行りも落ち着くのではないかと思います。
映画に戻りましょう。ズート・スーツが登場する、との情報をキャッチし、いつか観ようと思っていた名作を観れました。名作ですが、良くも悪くも内容がヘビーです。スパイク・リーの描きかた、カメラワークももちろんですが、デンゼル・ワシントンの演技がまたいい。カリスマが宿ってます。服装から入るもよし、作品から入るもよしですが、これは観ておいてよかったです。一般的には、マルコムXはキング牧師と比べて過激な発言をしていた、との見方をされますが、実際はどうだったのでしょう?映画は脚色がされていますが、マルコムの人柄と苦悩がとてもよく描かれています。ちなみに、服装とその背景のカルチャーに興味を持ったそこのあなた。このブログでは他にも1910年代の英国マフィアの服装を解説している記事があります。今回のズートスーツと是非見比べてみてください。michischili.hatenablog.com
他にも、スーツと言えども、モッズ・スタイルのスーツはまた全然違う成り立ちと美意識があります。モッズと言えば、日本で大人気、カラフルかつ品のあるポール・スミスのルーツのスタイルとも言えますね。モッズ・スタイルは当時の最先端の不良ファッションだったことがわかる映画『さらば青春の光』などもあります。
スーツといえども、地域、時代、音楽、などとの繋がりなどでこんなにも豊かな歴史があるんだ、と発見があると思います!本日も最後までご覧いただきありがとうございました。コメントの書き込み、その他SNSでのシェアなどして頂けるととても嬉しいです!それではまた!
ポール・スミスも?今更聞けない、モッズって何?『さらば青春の光』
本国よりも日本の方が売れていると言われる英国ファッション・ブランド、ポールスミス。現代版のモッズ、ポール・スミスは不良のイメージとはかけ離れてますが、実はモッズの起源って意外とぶっ飛んでたんです。今回はそんなモッズについて解説します!
細身のスーツ
Vゾーン、狭いを通りこしてほとんどないですね。ビートルズに関してはロッカーテイストなリーゼントに革ジャン時代もあり、中期から後期にはロン毛にフレアパンツというヒッピーな時代もあるので厳密には「モッズ」ではないですが、この服装は明らかに同時代に流行っていた「モッズ」を意識していたでしょう。
モッズコート=M-51
カーキのコートはざっくりとモッズコートと呼ばれていますが、基本的にはこの映画の中でも「モッズ」達が着ていたのはM-51というタイプのコートです。
現代のモッズ
これ。このバンドも(Bawdies)、
注)これはVゾーン深いですが
現代の日本でも使われる「モッズ風」のルーツはこの映画に描かれている「モッズ」ファッションになります。さて、この映画で主人公ジミーは青春とさらばしたのかどうかわかりませんが、60年代も終わり70年代になるとヒッピー達が登場します。そして「モッズ」の系統は同じイギリスで別のカルチャーへと引き継がれます。怒れる若者達は、よりディープなレゲエやダブを聞き、髪をモヒカン、またはスキンヘッドにし、細身のデニムにドクターマーチンやジョージコックスを履く、「パンク」として登場します。あ、ちなみに同じ60年代が舞台でスーツの着こなしがお洒落な映画、『シングル・マン』と比較しても面白いですね。『シングル・マン』はアメリカが舞台でおじさんが主役ですが、スーツといえどもこんなにも豊かな歴史があるのだなぁとしみじみ思うでしょう。
『マイ・インターン』とクラシック・ファッション
はじめに
紳士諸君、ハンカチを持ちましょう。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』のファッション
今なお音楽界で大きな影響力を持つDr. Dre(ヘッドホンブランド、Beats by Dr. Dreが最近Apple社に買収されましたね)や、映画製作、俳優としも活躍もするラッパーIce Cubeなどが所属していたグループ、N.W.A。1986年にデビューを果たした、このヒップホップグループは色な意味で型破りでした。
『最も危険な時代が生み出した最も危険なやつら」の服装、気になりますねぇ。服の話をする前に簡単にヒップホップのおさらいをしておきます。
ヒップ・ホップ黎明期ーN.W.A.以前
【1970年代ヒップホップ誕生】
NYの貧困街でヒップホップ誕生。当時はディスコが大ブームでしたが、この貧困街に住むアフリカ系やヒスパニック系の若者達はディスコにいくお金がなく、街角でレコードを流してパーティーをしてました。
【ヒップホップの4大要素】
【DJ】レコードを二枚以上同時に操り、曲の間奏部分(break)だけを流すとパーティーに来る人達の反応が良くなることを発見したのが、break beatsの始まりで、ここにヒップホップのDJが誕生します。
【MC】DJが流すビートに合わせて韻(rhyme)を踏む詩(lyrics)を、時には即興で作り、ラップをするのがMC。語源はMaster of Ceremony(司会)。ざっくり言うとMC=ラッパーです。
【Break Dance】DJの流すbreak beat に合わせて踊り出した人達をb-boyと呼びます。blackでもbadでもないのでご注意ください。
【Graffiti】落書きです。もちろん違法な物も多くあります。しかし、イーゼルを立て、キャンバスの上に描くという西洋美術とは異なる背景から生まれたこのストリートアートは一部ではありますが今では正当な(そんな物があるのかも怪しいですが一応)アートとして認められています。(古くはバスキア、ヘリングが活躍し、現代ではバンクシーなどもいますね)
さて、上記の4つの要素が70年代からじわじわと文化として広がっていきました。ギャング達の血で血を洗う戦いを終わらせる代わりに、ラップのバトルやグラフィティによる縄張り争いに変わっていったという側面もあります。この頃はまだヒップホップはマイナーな音楽でしたが、多くの若者達のハートを掴んでいました。最初期ではないですが、ヒップホップがメジャーになったきっかけを作ったグループ、RUN DMCの服を見てみましょう。
Kangolのハットをかぶり、adidasのジャージを着て、superstarを(たまに紐なしで)履く。初期のヒップホップファッションは今多くの人がイメージするダボダボのファッションではなかったのです。stansmithの復刻、そしてsuper starの復刻があり、kangolではなくてもこのタイプのハットがここ数年メンズファッションで人気が出ているのも、元はここなんですね。これが1986年の写真。
ギャングスタ・ラップ、コンプトンからデビュー
この2年後、1988年に今回の映画の主役のN.W.A.達はデビューアルバムをリリースします。そのNWAの服装を見てみましょう。
不良ですね。彼らが育ったカリフォルニア州コンプトンは全米で最も治安が悪いと言われてた地域でした。麻薬の売人をやったり、ギャングが銃を持ち込んでスクールバスに乗り込んでくるような日本では考えられない環境の中、彼等は音楽を通して「クリーン」に成功者になろうとします。映画の中にも描かれていますが、ただ仲間同士でだべってるだけで、パトカーがやってきて、突然身体チェックをうけるなど、理不尽な出来事がたくさんありました。そんな彼らは「ギャングスタ・ヒップホップ」と呼ばれていました。さて、このギャングスタヒップホップの服の特徴を幾つかご紹介しましょう。
1)地元のスポーツチームのキャップやジャージを着る
ヒップホップは地元愛が強いのが特徴です。自分の育った街を代表する、という歌詞はラップの中によく出てきます。そしてスポーツの世界もヒップホップの世界と似たように、実力勝負で上の世界へと行ける。同じアフリカ系アメリカ人の多くが活躍しているスポーツと親近感を持ったのも頷けますね。
2)ダボダボファッション
ヒップホップと言えばダボダボな服装、というイメージがありますね。でもこれには諸説ありまして、
・お金のない親が子供の服を買うときに、大きくなっても着られるように、と大きいサイズを着せた
・ギャング達の仲間内での自分の「悪さ」を誇示するため、刑務所で履かされていたような、脱走しにくい極太のパンツを履く。
3)ゴールドアクセサリー
派手で、ギラギラしているとなお良いこのアクセサリーはヒップホップスラングでは、「bling-bling」と呼ばれてます。これも貧困層出身の若者達が、マイク一本でのし上がって(またはDJのスキル)成功したことを誇示するため、と言われています。
ヒップホップの今
いかがでしょうか?NWAデビュー以降は「ギャングスタ・ヒップホップ」が主流として1990年代前半から2000年代前半まで君臨します。そして今のヒップホップのトップに君臨するPharrellやKanye Westが出てくることで、ギャングスタ・ヒップホップが一つのジャンル、歴史的区切りとして認識されるようになります。(PharrellやKanyeは全然ギャングではないですし、歌詞も、服装も、そして何よりも「音」が全然違いますね)
長くなってしまいましたが、いかがでしたか?かつて、ロックが尖った若者達の音楽で文化であった時代から、今はヒップホップがある種の尖った新しい音楽・文化を発信している時代である、と見ると色々面白いかもしれませんね。最後にこんな画像でお別れを。http://blog.apparelzoo.com/evolution-of-hip-hop-culture/
12/19(土)公開『ストレイト・アウタ・コンプトン 』予告編
今作に登場するDr. DreはJimmy Ivoneと組み、Appleによる企業買収で史上最高額となったBeats by Dreを立ち上げたました。そこに行き着くまでのドラマがそのままポップ・カルチャーの歴史、数ページを占めるほどの面白さがあります。ヒップ・ホップ文化の持つ起業家精神とアメリカの音楽ビジネスとマーケティングについて学べるので、そのあたりに興味のある方はNetflix制作のドキュメンタリーも是非ご覧ください!
ちなみにヒップホップ誕生物語を描いた、『ゲット・ダウン』というNetflixドラマもあります。『ロミオとジュリエット』や『ムーラン・ルージュ』で有名なバズ・ラーマン監督のドラマです。michischili.hatenablog.com
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モードの帝王。映画『サン・ローラン』で学ぶファッション史
ファッション史に名を轟かせる巨人、イヴ・サンローラン。サンローランの死後、彼の人生を描いた映画はたくさん出ましたが、彼がファッション史(産業も)においてどんな功績を残したかが、とてもよくわかる点で、僕は今作をオススメします。
パリの右岸左岸
スモーキングジャケット(タキシード)
バレエ・リュス
スポーツ・ファッションと言えば、この映画。『ロイヤル・テネンバウムズ』がお洒落!
今回ご紹介する映画は『ロイヤル・テネンバウムズ』 です。
監督はアメリカ人でありながらも、アメリカよりもヨーロッパや日本で人気のある印象の、ウェス・アンダーソン。この監督、アメリカ南部のテキサスという、カウボーイ的なアメリカン男子が多いイメージの州出身ですがね、本人は全然違うタイプです。今風に言うと草食っぽい。
コーデュロイや、ベルベットのセットアップをさらっと着こなしてるのがトレードマークです。
テニス・ファッション
そんなウェス・アンダーソンが作る映画は作り物感が満載です。もちろんいい意味で。 豊かな色彩、奥域の無い紙芝居の様な独特なカメラワークに、そして何よりもこれから紹介するような個性豊かなキャラクター達がいて、クスッと笑えてどこかジーンとくるアンダーソンワールドは作られています。この映画は、家族仲の悪いテネンバウム 家の物語。天才兄妹3人と学者の母が暮らす屋敷に、元弁護士で家を出て行った放蕩父?が数年振りに戻り、関係を修復しよう、という話。この兄妹の次男、リッチー・テネンバウム のファッションに注目。
キャメル色のコートがいいですね。 でもヘヤバンドもして、パッと見、危ない人ですねえ。
サングラスもかけたら尚、怪しい。。 このリッチーは天才テニス少年と持て囃されていたにもかかわらず、突如として引退、そして世界中を船で旅するという一癖あるキャラクターです。さて、この服装、突拍子もない映画用の衣装だと思いきや、こんなものを見つけました。 Vogue Homme 10月号「グランドスラム」
特集のタイトル通り、テニスに着想を得たのでしょう。(もしからしたらこの映画にも影響受けているかも)そしてこの特集(映画)は今のファッションのトレンドを映し出しているのです!
スポーツ・ミックス・ファッション
ファッション業界ではここ数年、スポーツテイストを取り入れることが一つのトレンドになっています。ニューバランスのスニーカーブームに火がつき、アディダスによるスタン・スミスの復刻、ナイキによるエアー・マックス、やハラチの復刻などと、スポーツメーカーによるスニーカーブームが大きな波となっていますね。
スポーツ×ファッションが今注目される理由とは? | Fashionsnap.com
この波は、いわゆるラグジュアリーブランドと呼ばれる高級ブランドにも影響を与えました。セリーヌによる高級スリッポン、ジバンシィやラフ・シモンズによるナイキやアディダスとのコラボレーションも記憶に新しいです。
スポーツ・ブランドとデザイナー・ブランド
さて、足元から始まったスポーツブームですが、実際の服にもスポーツ要素を取り入れる動きが出てきています。スポーツウェア独特の発色のいい蛍光色などをふんだんに取り入れるサカイや、このブームが始まる前からナイキとコラボレーションをしたライン(gyakusou)を発表していたアンダー・カバーなどはその筆頭でしょう。
NIKE x sacaiによるコラボレーション
別の視点でみると、スポーツテイストを取り入れ、より大きなトレンドである、「リラックス感(抜け感)」を演出できるかどうか、というのがポイントになります。
キャメルコートにスニーカー、とてもわかりやすい例ですね 。アンダーソン監督本人の服装も、リッチーの服装も、本来であれば比較的フォーマル、またはオジさんっぽい服装ですが、色や素材の組み合わせで見事に抜け感を出しています。こうやって俯瞰すると、映画の服装も怪しすぎず、違和感なく真似できるかも?と思う方、やはりあのヒゲは結構インパクトありますので、流石にそこは真似はしなくてもいいかもですね。昨今流行りのスポーツ・ファッション。ラグジュアリーブランドもこぞってスポーツテイストを取り込んでますが、この映画は遥か昔、2001年の制作。やっぱウェス・アンダーソンはお洒落だわ。
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英国マフィアの激渋ファッション。髪型もイケてるドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』
1910年代、イギリス・バーミンガムを拠点とするアイルランド系マフィアのドラマです。このドラマ、内容ももちろん面白いんですが、髪型もファッションも激渋でイケてるんです。
ツィードと髪型
さて、このドラマの主人公であるトミー・シェルビー(下の写真で右端の人)や主要なキャラクターの多くはキャスケットを被り、ツィードのスリーピースジャケットを着ています。
キャスケットとは前につばがあるふっくらとした帽子。ハンチングよりボリュームがあります。新聞配達をしていた少年達がかぶっていて、ニュースボーイキャップとも言われますね。
そしてスリーピースとは、ジャケットの下にベストを合わせて完成されるスタイルですね。ベストではなく、ウェウストコートというのが正式で、ジャケット、パンツ、ベスト全てが同じ生地であるのが本来のスーツの姿です。さらに、ベルトではなく、サスペンダー(英国では"braces"ブレイシーズと言います)をつけるのが正式です。そして首元には白の丸襟のシャツ。この着こなしが、きちんとしているけど、ちょっと外している、アンチ・ヒーロー像を描くのにぴったり。
髪型もかっこいい。トップ部分は量を残しつつ、サイドはスッキリ。クラシックなテイストのあるツーブロックですね。服装のテイストにしっかりあった髪型です。
左)トーマスの兄、アーサー・シェルビー
右)主役のトーマス・シェルビー
アーサーはオールバックの髪型に対して、トーマスは髪を前に流す髪型。同じツーブロックでも、微妙に違うニュアンスの髪型でキャラ作りをしたのは上手いなぁ。と関心。
イギリス紳士とイタリア・マフィアのスーツ
ちなみに、上記の生地のスーツは当時も今もフォーマルな生地ではありません。上記が労働者の服装を体現していたのに対して、上流〜中流階級の服装は刑事役のキャラクターが着ています。
ボーラーハット(山高帽)を被り、スーツの生地もツィードよりはフランネルのような綺麗な生地に見えますね。こちらのほうが英国ファッションの中でも正当な服装に近いです。さらにこのドラマ、敵対するイタリアンマフィアも登場しますが、イギリスとイタリアのそれぞれの国の服の特徴をきちんと表しています。
フェドラハット(中折れ帽)を被り、色鮮やかに着こなす。フェドラハットといば、イタリアのボルサリーノ社のハットが有名ですが、前述したボーラーハットより柔らかいため、ソフトハットとも言われます。
イギリス・スーツとイタリア・スーツ
ブランドや物によっては違いますが、国別のスーツの特徴をまとめると、イギリスは質実剛健、悪くいえば地味。イタリアのスーツは、軽く、華やか、悪くいえばチャラい。
もちろん本家はイギリスなので、イギリスの服を知っておくのは損ではないでしょう。
とはいえ、このドラマのまんま、洋服を現代日本で来たらコスプレっぽくなりますので、この服装の雰囲気が感じられて、日常でも取り入れられそうなポイントとブランドを紹介して終わります。簡単なのは、何時もの白シャツを丸襟に変えてみる。もちろんネクタイのノットは小さめで。それだけで首回りの印象が変わります。
ブランドで言えば、ポール・ハーンデン
ネメスや、ナイジェル・ケーボーンもピーキー・ブラインダーズっぽいですが、ドラマの男達から感じるストイックさ、近より難さ、そしてジャケットのかっこよさでいえば、やはりポール・ハーンデンではないでしょうか。ポール・ハーンデンは値段的にも近より難いですが、いつかさらっと来こなせるようなおじさんになりたいですね。
ちなみに、スーツやメンズ服のことが気になったそこのあなた。このブログではこれ以外にもスーツが魅力的な映画をたくさんご紹介しています。映画史に燦然と輝く名作のイタリア映画『8 1/2』や、ファッション・デザイナー自ら監督をした映画『シングル・マン』はクラシック、かつ品のある大人なスーツスタイルが魅力的。
一方、もっとスーツを崩したやんちゃスタイルといば、ヨウジヤマモトにも引き継がれている極端なサイズ感のズート・スーツが見れる映画『マルコムX』や、日本で大人気、カラフルかつ品のあるポール・スミスのルーツとなったモッズ・スタイルは当時の最先端の不良ファッションだったことがわかる映画『さらば青春の光』などもあります。
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スーツといえどもいろんな地域や時代、音楽との繋がりなどでこんなにも豊かな歴史があるんだ、と発見があると思います!本日も最後までご覧いただきありがとうございました。コメントの書き込み、その他SNSでのシェアなどして頂けるととても嬉しいです!それではまた!
眠くなるけど美しい。映画『ストーカー』はナウシカの元ネタにもなった
やっと見れました、ロシア出身の監督タルコフスキーによるストーカー。
1979年の映画ですが、国内ではなかなかレンタルができなかったところに最近やっとDVD化されてツタヤで借りられました。
念の為ですが、この「ストーカー」とは、帰り道に自分の後をつけてくる、あの危ない人のストーカーではないです。本来は「獲物を狩るハンター」という意味合いが強かったみたいです。
とりあえず、あらすじから。
【あらすじ】
ある村に隕石が落ちた。その村は焼け、多くの人が犠牲になり政府はその村周辺を立ち入り禁止の「ゾーン」と名付けた。
厳重に警備されたゾーンの中心にはどんな希望でも叶えてくれる「部屋」があるという。そしてその部屋を求めて「ゾーン」に立ち入ろうとする者がいるが、生きて帰ってこれた者はほとんどいないという。
物語は、このゾーンの中に精通しているゾーンの道先案内人(「ストーカー」)のもとを「科学者」と「小説家」が訪ね、ゾーン入りをするところから始まる。
三人は無事ゾーンに入れるのか。
そして希望の「部屋」に辿りつけられるのか。
ゾーンの正体とは。
【感想・考察】
まず、この監督の映画は眠くなります。
この監督は惑星ソラリスを最初に見たのですが、そちらもかなり眠くなります。
それよりは個人的にはストーカーのほうがよかったです。
(今見直したらソラリスもよく見えるかも)
というかストーカーはかなり好きな映画です。
眠くなる理由:
・セリフが少ない
・セリフがあったとしても、抽象的な言葉が多い
・長回しが多い(映像をゆっくり、じっくり見せることを重視している)
と、手放しに絶賛できないですし、誰にでも勧められる映画ではないです。
でもこの眠くなる要素も含めてこの映画は強烈に印象に残るんです。
で、演出で面白かった点。
【演出メモ】
①モノクロで描かれた「現実」世界
物語の冒頭はモノクロにちかいセピア調の色で始まります。
そしてこのセピア調の色合いは現実世界(ゾーンの外側)を描くときに使っています。
そして冒頭ではストーカーの奥さんが怒ってるんですね。
「あんたまたあそこに戻るつもり!?また牢屋に入りたいの?」
「ろくな夫じゃないからろくな子供も生まれないじゃないの」
(娘は足が不自由で喋ることもできないみたいです)
みたいなことをいってかなりくらーい雰囲気でスタート。
そしてこの部分が割と長い。
こんな感じ。
でもこの描き方をすることで、この街の匂いや湿っぽさも伝わってくるような効果があるんです。写真家でいうと宮本隆司という廃墟や建築を撮る人に似てる。
②「ゾーン」内で一気に花開く色彩
くらーい重い雰囲気でスタートする映画ですが、「ゾーン」内にやっと入ると画面は一変。色彩が一気に花開き!
と思いきや、確かに綺麗なんだけど、ゾーンは廃墟と化した村なのでどこか寂しげ。
でもどこかに懐かしさや暖かさが感じられました。
さて、冒頭では頼りなさそうな人物として描かれていたストーカー。いざゾーンに入ると急にイキイキし始める。ストーカーにとってはゾーンが「現実」なのかもしれないですね。
③不思議な画
ゾーンの中で「部屋」にたどり着く直前のシーン。
具体的にどんな場所か忘れてしまったけど、この画を見て、とても宮崎駿っぽいと思った。ナウシカの腐海やもののけ姫のシシガミの森とか。(もちろん、シシガミの森は屋久島の森がモデルになってるというのは知ってます。)
まぁ過去のインタビューで宮崎さんはタルコフスキーに言及してるので、少なからずこの映画の影響は受けてるのでしょう。
④ゾーンから帰還した後の「現実」の描き方と娘の変化
と、ここは物語の核心だと思うので見てからのお楽しみに。
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SFのような設定だけど、最先端の機械は全く登場せず、(最後のあのシーンだけ特別)むしろ機械や文明が朽ちた世界をタルコフスキーはよく描く。
これは侘び寂びのような美意識にも通じる気がします。坐禅のような理性では捉えられない部分もあるかも。
という意味では眠くなるのも、もしかして計算済みなのかもしれない。観客の意識が朦朧として、映画のシーンがもやもや見えるようにしてる。眠い時に心に響くものがある?
ちなみにこの白黒がカラーに変わるという演出は僕の好きな押井守が監督した実写映画のアヴァロンでも引用されてます。
シンドラーのリストでも白黒に効果的に赤を足したりしてたかな。
あと、ヴィム・ヴェンダースのベルリン天使の詩でもやってたか。
チェルノブイリ原発事故を予言するかのような描写など、文明批判の要素もありますが、それより人間に対する暖かさがあるのかなーと思いました。
アヴァロンの話や、タルコフスキーがやっとレンタルできるようになった話、(コンテンツと流通の話に繋がります)など、この映画からさらに話を広められそうですが、眠くなってきたので寝ます。
ということでまた次の機会に。