読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画で学ぶファッション史

生きたファッションは映画やドラマで学べる! 洋服屋による映画レビュー。 チームで映画も作ってます。

【ファッション史4】Straight Outta Compton

明けましておめでとうございます!

今年も宜しくお願い致します。

 

新年最初に紹介する映画はこちら!

2015年公開、Straight Outta Compton

f:id:michischili:20151111122700j:plain

 

 


12/19(土)公開『ストレイト・アウタ・コンプトン 』予告編

 

 

1986年にデビューを果たしたアメリカのヒップホップグループ、N.W.A.の伝記映画。

今なお音楽界で大きな影響力を持つDr. Dre(ヘッドホンブランド、Beats by Dr. Dreが最近Apple社に買収されましたね)や、映画製作、俳優としも活躍もするラッパーIce Cubeなどが所属していたグループです。

 

『最も危険な時代が生み出した最も危険なやつら」の服装、気になりますねぇ。

服の話をする前に簡単にヒップホップのおさらいをしておきます。

 

【1970年代ヒップホップ誕生】

NYの貧困街でヒップホップ誕生。当時はディスコが大ブームでしたが、この貧困街に住むアフリカ系やヒスパニック系の若者達はディスコにいくお金がなく、街角でレコードを流してパーティーをしてました。

 

【ヒップホップの4大要素】

【DJ】レコードを二枚以上同時に操り、曲の間奏部分(break)だけを流すとパーティーに来る人達の反応が良くなることを発見したのが、break beatsの始まりで、ここにヒップホップのDJが誕生します。

【MC】DJが流すビートに合わせて韻(rhyme)を踏む詩(lyrics)を、時には即興で作り、ラップをするのがMC。語源はMaster of Ceremony(司会)。ざっくり言うとMC=ラッパーです。

【Break Dance】DJの流すbreak beat に合わせて踊り出した人達をb-boyと呼びます。blackでもbadでもないのでご注意ください。

【Graffiti】落書きです。もちろん違法な物も多くあります。しかし、イーゼルを立て、キャンバスの上に描くという西洋美術とは異なる背景から生まれたこのストリートアートは一部ではありますが今では正当な(そんな物があるのかも怪しいですが一応)アートとして認められています。(古くはバスキア、ヘリングが活躍し、現代ではバンクシーなどもいますね)

 

さて、上記の4つの要素が70年代からじわじわと文化として広がっていきました。ギャング達の血で血を洗う戦いを終わらせる代わりに、ラップのバトルやグラフィティによる縄張り争いに変わっていったという側面もあります。

 

この頃はまだヒップホップはマイナーな音楽でしたが、多くの若者達のハートを掴んでいました。

最初期ではないですが、ヒップホップがメジャーになったきっかけを作ったグループ、RUN DMCの服を見てみましょう。

f:id:michischili:20160101030718j:plain

Kangolのハットをかぶり、adidasのジャージを着て、superstarを(たまに紐なしで)履く。初期のヒップホップファッションは今多くの人がイメージするダボダボのファッションではなかったのです。stansmithの復刻、そしてsuper starの復刻があり、kangolではなくてもこのタイプのハットがここ数年メンズファッションで人気が出ているのも、元はここなんですね。これが1986年の写真。

 

 

 

この2年後、1988年に今回の映画の主役のN.W.A.達はデビューアルバムをリリースします。そのNWAの服装を見てみましょう。

f:id:michischili:20160101031955p:plain

 

不良ですね。

彼らが育ったカリフォルニア州コンプトンは全米で最も治安が悪いと言われてた地域でした。麻薬の売人をやったり、ギャングが銃を持ち込んでスクールバスに乗り込んでくるような日本では考えられない環境の中、彼等は音楽を通して「クリーン」に成功者になろうとします。映画の中にも描かれていますが、ただ仲間同士でだべってるだけで、パトカーがやってきて、突然身体チェックをうけるなど、理不尽な出来事がたくさんありました。

 

そんな彼らは「ギャングスタ・ヒップホップ」と呼ばれていました。

さて、このギャングスタヒップホップの服の特徴を幾つかご紹介しましょう。

 

1)地元のスポーツチームのキャップやジャージを着る

ヒップホップは地元愛が強いのが特徴です。自分の育った街を代表する、という歌詞はラップの中によく出てきます。そしてスポーツの世界もヒップホップの世界と似たように、実力勝負で上の世界へと行ける。同じアフリカ系アメリカ人の多くが活躍しているスポーツと親近感を持ったのも頷けますね。

 

 2)ダボダボファッション

ヒップホップと言えばダボダボな服装、というイメージがありますね。でもこれには諸説ありまして、

・お金のない親が子供の服を買うときに、大きくなっても着られるように、と大きいサイズを着せた

・ギャング達の仲間内での自分の「悪さ」を誇示するため、刑務所で履かされていたような、脱走しにくい極太のパンツを履く。

 

3)ゴールドアクセサリー

派手で、ギラギラしているとなお良いこのアクセサリーはヒップホップスラングでは、「bling-bling」と呼ばれてます。これも貧困層出身の若者達が、マイク一本でのし上がって(またはDJのスキル)成功したことを誇示するため、と言われています。

 

いかがでしょうか?

NWAデビュー以降は「ギャングスタ・ヒップホップ」が主流として1990年代前半から2000年代前半まで君臨します。そして今のヒップホップのトップに君臨するPharrellKanye Westが出てくることで、ギャング・ヒップホップが一つのジャンル、歴史的区切りとして認識されるようになります。(PharrellやKanyeは全然ギャングではないですし、歌詞も、服装も、そして何よりも「音」が全然違いますね)

 

長くなってしまいましたが、いかがでしたか?

かつて、ロックが尖った若者達の音楽で文化であった時代から、今はヒップホップがある種の尖った新しい音楽・文化を発信している時代である、と見ると色々面白いかもしれませんね。

 

最後にこんな画像でお別れを。

http://blog.apparelzoo.com/evolution-of-hip-hop-culture/

f:id:michischili:20160101025506p:plain