読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画で学ぶファッション史

生きたファッションは映画やドラマで学べる! 洋服屋による映画レビュー。 チームで映画も作ってます。

【ファッション史9】The Getdownとスニーカー

f:id:michischili:20160921021444j:plain

ザ・ゲットダウン
バズ・ラーマン製作総指揮。2016年8月公開。
 
 
 
映画ではなく、ドラマになりますがご了承ください。
今映画配信やドラマの配信の世界で大きな影響力を持ってるのが、アメリカ発のNetflixというサービスです。
 
元々はTSUTAYAのようなビデオのレンタル事業をしていたみたいですが、山あり谷ありで数年前にネット配信に着手。そこから快進撃を続けて今に至ります。
 
 
そのNetflixですが、ただ作品を配信してるだけでなく、自ら映画やドラマを作ってる、というのが何よりもの強みとなってます。
 
その快進撃は、2013年に第1シーズンが配信されたハウスオブカードから始まりました。
ご存知の方もいるかと思いますが、当時このドラマは業界に大きな影響を与えました。
 
 
何せ、ハリウッドでも屈指の売れっ子、デビッド・フィンチャーを製作総指揮(一部監督も)に迎えたのです。
 
 
 
 
前置きがだいぶ長くなりました。
 
 
 
今回は、そんなNetflixが製作したヒップホップ誕生の物語を描くドラマ、The Getdownを紹介します。
 
 
舞台は1977年ニューヨーク、ブロンクス
当時は街中には貧困が蔓延り、若者は犯罪に走り、売人は薬で儲かる。
今のニューヨークからは想像できないような巨大なスラムだったそうです。
 
 
 
主人公はアフリカ系とヒスパニック系(プエルトリコみたいです)のハーフの少年、エゼキエル。

f:id:michischili:20160921022130j:plain

ブロッコリーのようなアフロがいい味出してますね。
 
 
当時、ニューヨークは貧困層と富裕層の住むエリアがはっきりと分かれていました。
そして貧困層が住む地域、ブロンクスからヒップホップは誕生するのです。
 
 
さて、今回の服装ですがこちらをご覧下さい。
 

f:id:michischili:20160921022155j:plain

彼はエゼキエルにヒップホップを教えてくれるシャオリンというニックネームの青年です。
赤のプーマを履いてますね。プーマのクラシックスエードというモデルです。
 

f:id:michischili:20160921022254j:plain

 
70年代当時は、ディスコブーム全盛期。
エゼキエルも、ディスコクラブに入ろうとするために、友達のお父さんの服を借りるシーンが描かれます。
 
 
お金のある大人達がクラブのなかで踊っていた裏で、
クラブに入れず、お金もない若者達は路上で新しい音楽や踊りを生み出していました。
そしてもちろん、この動きはファッションとも切り離せません
 
 
このドラマで描かれているヒップホップ黎明期の数年後、
服と映画4でも紹介したRUN-DMCというグループがデビューし、
ヒップホップが全米に知れ渡る大きなきっかけを作ります。
 

f:id:michischili:20160921022442j:plain

1986年の画像ですね。
 
 
 
さて、ドラマは77年から数年間(第2シーズンでどれくらい進むかにもよりますが)を描いてますが、少し先に進んでみましょう。
 
RUN-DMCによって一気にメジャーな音楽の仲間入りを果たしたヒップホップですが、
当時はまだまだアフリカ系、またはヒスパニック系の文化というイメージが強かったです。
 
そんなイメージをこのグループが壊します。
 

f:id:michischili:20160921022524p:plain

1992年に発売された彼らのアルバム、Check Your Headのために撮られた写真。
 

PumaとAdidasですね。

このように、ヒップホップ初期(Beastie Boysもここでは一応初期とします)の服装としては、ローテクなスニーカーを履く人がほとんどでした。

しかし、のちに90年代から〜2000年程までは、ヒップホップの中心地が東海岸(ニューヨーク)から西海岸(カリフォルニア)に移り、ギャングスタ・ラップというタイプのヒップホップが流行り、服装の流行りにも変化が訪れます。(詳しくは服と映画4をご覧下さい。)

 



整理しましょう。


The Getdownで描かれる最初期ヒップホップからBeastie Boysの流れ
→ローテクなスニーカー中心

 
NWAデビュー以降、映画Straight Outta Comptonで描かれるギャングスタ・ヒップホップ以降

→Timberlandなどのブーツや、Nikeエアフォースワンなど、ボリュームのある靴が流行ります。

 
 
さて、ドラマに話を戻しましょう。
主人公エゼキエルは、幼い時に親を亡くし、親戚に育ててもらっています。
読書家で、教養もあり、学校の先生からも、作文の才能を認められたエゼキエル。
しかし、自分の生い立ちのせいか自分に自信がなく、才能を活かしきれない。
 
有能な学生のためのインターンの話が来ても、「どうせ金持ちの白人様の言いなりになるだけだ」、と友達に言われ決断できずにいる。
 
そんな時に出会うのが、赤いプーマを履いたシャオリンなのです。
 
そして、エゼキエルと仲間達はこの全く新しい、産声をあげたばかりの文化(遊び:はい、文化とは一言でいうと遊びです)にのめり込み、ラップの才能が開花する。(リズムに合わせて韻をふむのですが、思った以上に難しいんです!その難しさも描かれてます)
 

f:id:michischili:20160923015744j:plain

 
 
また、エゼキエルの幼馴染みであり、片思い(?)の相手がクラスメートのマイリーン。
 
 

f:id:michischili:20160822112543j:plain

 

彼女はキリスト教の牧師を父に持ち、教会で聖歌を歌っていますが、ディスコ・スターになり、この貧困の街から出たいという夢を持っています。しかし、厳格なペンテコステ派の牧師の父からは、ディスコは悪魔の音楽だ、と断固反対されます。

 

ディスコ音楽と教会音楽という部分もきちんと描いているのはとても勉強になります。

アメリカのミュージシャンで聖歌隊出身の人は非常に多い点から、その背景を観れるのは日本に住む僕たちにとってはとても新鮮だと思います。

 

誰もが、エゼキエルの教養の深さを評価しているにも関わらず、才能を活かしきれない。

誰もが、マイリーンの歌声を評価しているにも関わらず、父がその才能を使わせてくれない。

 

この才能のある若者二人は時代の波にのまれてしまうのでしょうか? 

 

このドラマ、ヒップホップ誕生物語でもありますが、

若者の青春ドラマでもあり、弱者が夢を掴みとろうとするアメリカンドリームも描いてます。服の話からずれてしまいますが、ヒップホップ誕生と切ってもきれないグラフィティ(落書き)の文化もリアルに描いています。

 

 この夏公開されてからは、アメリカで大ヒットしたみたいですが、日本でも同じ公開時期に観れるのはいいですね。僕も寝る間を惜しんで一気見してしまいました。

 

 

 

今回はスニーカーを中心に解説しまたしが、いかがでしたでしょうか?ちなみに未だにヒップホップとスニーカー(ファッション)の関係は切っても切り離せず、最近ではKanye WestAdidasと共同でプロデュースしているyeezyというスニーカーが人気だったりします。


f:id:michischili:20160923002732p:plain


無法地帯の若者達を潰しにかかる嫌な大人達と、
現状を憂いながらも、もっと良くしていきたい!と反発する若者達の熱血ドラマ。
ヒップホップ誕生の裏側は、小説よりも奇な血沸き肉踊る若者達の叫びの物語でした。
 
 
どっちが勝ったって?それはもう皆さんご存知ですよね。
 
それではまた、Peace!