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ブログを初めて早6年。平成生まれ、米国育ちの映画オタク。元パリコレブランド勤務で今はマーケターやってます。

【建築8】木造のアバンギャルド~SANAAの新作~

抽象的、浮遊感、清涼感、柔らかい、白い。

 

妹島和世西沢立衛による建築ユニットのSANAAの建物を表すとしたら以上のような言葉を使うことになるだろうか。

金沢21世紀美術館で世界に名を知らしめた二人組は建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞し、住宅、集合住宅そしてなによりも美術館の設計で独自の世界を切り開いていることで有名だ。

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一般的な美術館は、重く、権威を示すような場で、入り口があり順路がある。必然的に建物の中に序列ができてしまいがちだ。中には日本では「ハコモノ」として周辺環境と全くとけ込めず、周辺の住民にも愛されていない美術館があったりするそうだ。

 

そんな美術館とは対象的に金沢21世紀美術館は、

・金沢という地方都市の

・更に現代アート専門で

・無料スペースと有料スペースに分かれていて

・円形であり

・内部は大小様々な箱が展示スペースとなっていて

・入り口と出口は4カ所ある

 

などと機能の面でも新しかった。

そして写真でもご覧いただける通り、外部と内部の境目が曖昧な緩やか操作がこの美術館のデザイン面で特筆される点である。一部の無料スペースで現代アートを体感できる場所あったり、閉館時間が比較的早い美術館にしては異例の夜10時まで空いてる箇所があることから一般的な美術館ではなく公園のような役割を果たしている。仕事の合間のサラリーマンや、子育て中のお母さん、この建物目当ての建築好きなど様々な人たちの憩いの場所として愛されている。そして何よりも、会館当初から異例の入場記録をたたき出し、美術館周辺には飲食店やギャラリーなどができたりと建物がただのハコではなく、街にとけ込み、人が集まり、そしてそこから街へと新たな動きができるという理想の美術館である。

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こちらは西沢さん個人で設計した豊島美術館

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で、やっとここから本題。

こういった周囲にとけ込み、建築家の隈研吾の言葉を借りると「周囲に対して勝ち誇る建築ではなく、負ける建築」を立ててた妹島さん、西沢さんの両者の建築家としてのキャリアが大きな転換点を迎えた。気がする。

最新号の新建築に掲載された写真をみて衝撃を受けたのでそれを紹介する。

 

新建築 2014年 11月号 [雑誌]

新建築 2014年 11月号 [雑誌]

 

新建築2014.11号

 

 

両者が設計した個人住宅は木造だ。

大事なことなのでもう一度いう。

 

両者が設計した個人住宅は木造だ。

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妹島さんによる団子坂の家。

 

 

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西沢さんによる寺崎邸。

 

 

 

残念ながらこの転換点が建築史として、または構法としてどういう意味合いがあるかという専門的な解説は僕はできない。

 

一つ言えるのは、素材を変えるだけで、これだけ新しく見える。

おそらく設計のプロセスにも変化があり、結果としてできた建物そのものの質も大きく変わる。ということ。

木造のアバンギャルド、という題名にしたものの、おそらくアバンギャルドという言葉は適切ではないと思う。しかし、既に建築の世界で新しい世界を切り開いてきた両者がある意味自らのスタイルを捨て、木材を全面に使ったということは素材に対する批評性であり、ある種のアバンギャルドとも言える。

この2作は木造建築、ひいては現代建築の世界を更にまた可能性を大きく変えることになるのではないかと考えている。

 

(注)

私は建築の専門の教育を受けていないので間違った記述があるかもしれませんが、ご了承ください。間違った部分があった際にはご指摘いただけると幸いです。

 

(注2)

新作2作の写真は新建築2014.11から転載。