映画とドラマとファッションと

ブログを初めて早6年。平成生まれ、米国育ちの映画オタク。元パリコレブランド勤務で今はマーケターやってます。

ルイ・ヴィトンの新デザイナー、ヴァージル・アブローって誰?

 

街中で皆様見かけた事は一度くらいはあると思います、このブランドoff white。高級ストリート・ウェアというコンセプトで若者に人気のブランドです。

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この度、Off-Whiteの設立者であるヴァージル・アブロー(以下、ヴァージル)が、前任者キム・ジョーンズに代わり、ルイ・ヴィトンメンズウェアのアーティスティック・ディレクターに就任しました。 Off-Whiteのデザイナーというのは知っていたものの、それ以外はあまり彼の事をそこまで知らなかったので、この際調べてみました。 

news.yahoo.co.jp

 

このニュース、単なるファッションの話題に見えますが、このニュースの背景を理解すると、ポップ・カルチャーの最前線が見えてきます。ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、ジャンルを跨いだ新しい交流が怒涛のように生まれています。ヴィトンやラグジュアリーブランドのマーケティング的視点から考えると、ヴァージルの起用はブランディングの一環とも捉えられますね。ではヴァージルって何者なんでしょうか?

はじめに

長らく更新が滞ってしまいましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?これまで映画でファッションを解説する、という視点でブログを書いてました。とは言え、自分の興味や守備範囲が広すぎる。この際、ポップカルチャー全般✖︎マーケティングのガイドマップのようにしよう、という事でリニューアルをしました。もっと言うと、最前線のポップカルチャー≒最前線のクリエイティブな人の集まりとも見れます。最前線を追いかける人の参考になれば、と思います。 

ヴァージルと現代アート

ヴィトンのクリエイティブ・ディレクター就任に先立ち、ヴァージルが3月16日より広尾で初の個展を開催してました。という事で、今日会期終了ですが先日駆け込んできました。この広尾にあるカイカイ・キキ・ギャラリー、現代アーティストである村上隆氏が運営してるギャラリーです。こちらはヴァージルと村上の共同で展覧会を開催した時の画像。 

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注)真ん中はジャスティン・ティンバーレイクです。 

 

 村上氏曰く、「ヴァージルは単なるデザイナーではなく現代アートにも通じる物作りをしている」との事でした。展覧会を見た限り、正直「現代アート」として評価されるのかちょっと疑問を持ってしまいましたが、「消費社会」への言及と「企業ロゴ」の多用はある種、現代的だな、と思いました。ちなみに村上隆と言えば、日本画をルーツにしながら花柄のキャラクターやドクロなどをモチーフに描く事で国内より海外で人気のアーティストですが、村上隆も実はLVと仕事をしていました。

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ヴィトンではここ数年、積極的に外部のデザイナーやアーティストを起用した限定商品の企画を行なっています。こういった積み重ねの上で、外部のクリエイターの起用が効果的であると判断されたのでしょう。限定商品だけでなくメンズウェア全体の責任者としてヴァージルが選ばれた理由にはこういう背景もあるようですね。

ヴァージルと音楽

ヴァージルは現代アートだけではなく、音楽業界にも大きな繋がりがあります。カニエ・ウェストというヒップホップ・ミュージシャンを皆様ご存知でしょうか。 

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左)ヴァージル・アブロー

右)カニエ・ウエス

 

カニエ・ウェストは2000年代〜今に至るまで、ヒップ・ポップのみならずポップ・ミュージックの世界では最先端の音楽を作る事で知られています。本人自身ラップをしたり歌ったりしますが、彼はソウル・ミュージックをサンプリングした甘く、どこか懐かしさを感じさせるトラック(曲)作りに定評がありました。デビュー以降も様々な音作りにチャレンジしているクリエイターです。 

ヴァージルとカニエは同じシカゴ出身。しかも2人ともフェンディにてインターンをしていました。ヴァージルは以前カニエの設立したファッション・ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めていました。そして今では幻となってしまいましたが、カニエもヴィトンとコラボレーションをしていました。

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そしてカニエの、3枚目のアルバムジャケットを手掛けたのは、そう村上隆です。  

Graduation

Graduation

 

最先端の音楽と現代アートもこういう風に有機的に繋がっているんですね。 

ヴァージルと建築

ヴァージルはところでどこでデザインについて学んでいたのでしょうか。調べると、アメリカのイリノイ工科大学で、建築を学んでいました。そこでレム・コールハースに学び、プロダクトのコンサルティングも学んだそうです。このレム・コールハースは建築界では建築家の建築家とも言えるような存在で、徹底したリサーチから提案される新しい建築の在り方は建築家だけでなく多くのクリエイターにも影響を及ぼしています。

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左)ミウッチャ・プラダ

右)レム・コールハース

そしてコールハースはヴィトンとは競合に当たる、プラダマーケティングに長年携わっています。具体的にはミラノコレクションの会場設計や、プラダ財団や一部店舗の設計も手掛けていますし、プラダのプロジェクトをまとめてこんな本も出版しています。

Rem Koolhaas: Projects for Prada

Rem Koolhaas: Projects for Prada

 

建築側の視点ですと、こちらの美術手帳に掲載されているヴァージルのインタビューがより詳しいです。ファッション・ブランドのインテリアデザインについて詳しい建築家、浅子佳英さんがインタビューをしておりまして、こちらも勉強になります。

ヴァージル・アブローが語る自身の「DNA」。世界初個展「”PAY PER VIEW”」で見せるものとは?|美術手帖 

最後に

いかがでしたか?このように、ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、様々なジャンルを超えて新しい交流が生まれています。そして多くのグローバル企業のマーケティング企画ではこう行ったポップ・カルチャーやストリート・カルチャーの人間に仕事を依頼するケースが年々増えています。日本だとまだまだヒップホップを身近に感じられず、聞き慣れていない人もいるようです。今後このブログでは、ポップ・カルチャーがいかに様々な分野のクリエイターや企業のマーケティングと繋がっていくのかを紹介していきたいと思います。

 

興味がある方はこちらの記事もどうぞ!ヒップホップ発のヘッドホン・ブランドが、Apple史上最高額で買収されるに至った経緯を描いたドキュメンタリーを紹介してます。 

michischili.hatenablog.com

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代官山の新名所。古着屋Ambivalence

師走ですね。

 

4月以降の更新となってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

僕は今年始めたカメラが楽しくて、ブログから少し遠のいてしまってました。来年はもう少しマメに更新します。 

映画もいくつか観ましたが、今回はとあるお店をご紹介致します。

 

 

Ambivalence

 

(ここではルックブックで使われた画像が見れます)

音楽だけじゃない!『ラ・ラ・ランド』は開襟シャツとスペクテイター・シューズも魅力的!

はじめに

映画『ララランド』のファッションについて。前編は映画の色使いについてでしたが、後編はライアン・ゴズリング演じる、セブ役の服装について解説します! 

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まず、このセブのシャツを見てみましょう。開襟(またはオープンカラーと呼びます)のシャツを普段から着て、髪をキチッと固めるスタイル、カッコいいですね。実はこういうスタイル、メンズファッション誌Popeyeの4月号でも紹介されてます。

そもそも開襟シャツとは?

まず開襟シャツの特徴は、名前の通り襟が開いてる点があげられます。襟が開くだけでなく、襟が倒れた状態になりますね。当然ですが、ネクタイを締めるのには適していません。

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 開襟シャツのもう1つの特徴ですが、裾がスパッと横に切られています。

 

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開襟シャツ

シャツの起源

本来、シャツはパンツの中にしまう設定で裾が長く作られています。
シャツは元々ヨーロッパの貴族が着る肌着でした。 

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17世紀のヨーロッパの男性貴族の肌着(シャツの原型)
 日本人ではあまり見かけないですが、未だに欧米の人はシャツを直接素肌に着る人、多いです。 
なので、欧米の上流階級の人はスーツを脱いでシャツ1枚になることはあまりないです。
本来、シャツの上にはベストを着て、その上に上着を着るという決まりがあります。
(ベスト:ヴェスト→ウェーイスト・コートwaist coatが転じた、という説もあり。)

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これはダブル仕立てのウエスト・コートですね。
 上着+ベスト+シャツの組み合わせは、重たいだけでなく、夏には暑くて着れないですよね。
こうして、メンズファッションはベストを簡略化し(あえて今でもベストをきちんと着る人もいますが)、シャツも肌着要素が減り、今に至ります。 
開襟シャツは、こういったシャツの進化系の一種ですね。
ボーリングシャツやアロハシャツは最も有名な部類の開襟シャツに入ります。

スペクテイター・シューズ〜または、コンビ・シューズ〜

 『ララランド』のファッション、続けて足元も見て見ましょう。

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最初のパーティーのあと、2人がタップダンスをするシーンがありますがわざわざミアはヒールから別の靴に履き替えてますね。 これ、タップダンス用のタップシューズなんですが、セブは履き替えていません。ミュージカルとしては、タップシューズに履き替えさせて踊るというのはアリですが、タップシューズは普段履きはしないのですね。セブが履いてるのはスペクテイターシューズです。

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 コンビシューズ、ツートンシューズとも言われますが、2色使いの靴の起源はスペクテイターシューズと言われています。 スペクテイター(spectator)とは、観戦者という意味がありますが、これ、元々はスポーツや競馬を観戦する人が履いてたんです。1920年代頃、欧米の貴族や上流階級の人達はスポーツ観戦や競馬を見に行く際に適したお洒落をしました。競技場や競馬場は当時は重要な社交の場だったようです。まだまだスニーカーなんてない時代、少しでも革靴をスポーティに見せる為、2色使いにしよう、と生まれたのがこの靴です。

ジャズ・ファッション〜フランク・シナトラの場合〜

さて、開襟シャツにスペクテイターシューズというちょっと一癖ある服を着てるセブ。
忘れてはならないのが、彼はジャズミュージシャンとういうこと。しかも頑固者として描かれていて、ジャズ全盛期の頃が好きで好きで仕方ない人として描かれてる。実はこの組み合わせ、1940年代〜1950年代のビバップからモードジャズなどがジャズ全盛期の頃の服装なんです。

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フランク・シナトラ-1943年の写真

ジャズ歌手、ミュージカル俳優、そして当時のアメリカを代表する大スターにしてアイドル、フランク・シナトラの写真です。セブが崇拝してる部類のジャズミュージシャンではないですが、開襟シャツと、靴もうっすらとですが、2色使いになってる写真をみつけました。とういうことで、前編後編に分けてお送りした『ララランド』特集、いかがでしたか?色々な意見があるラ・ラ・ランドですが、僕は楽しめました。舞台ミュージカルの映画化や、ディズニー映画ではない、オリジナル作品なのに世界中で大ヒットを連発。しかも製作は、ワーナーや20世紀フォックスなどのハリウッド6と呼ばれる大スタジオではないのです。 そして更に、夢を追いかける若者を描いた作品というのが憎いですね。悔しさをバネに、ブログを更新し続けます!

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音楽だけじゃない!色使いも魅力的、映画『ラ・ラランド』

ララランドの色使い

前代未聞のアカデミー賞での珍事や、ジャズミュージシャンやジャズ警察(?)と呼ばれる人達による「これはジャズか否か」論争などもあり、色々な意味で世の中を賑わせてくれているラ・ラ・ランド。2回に渡ってこの映画の衣装を解説します! 


「ラ・ラ・ランド」本予告

ララランド
デミアン・チャゼル監督-2017年公開。
女優を目指すミアと、その友人達の着るドレスのカラフルさが際立ちますね。監督は往年のミュージカル映画へのオマージュをたくさん散りばめていますが、このカラフルな衣装もその1つです。

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ミュージカルのオマージュ

ミュージカル映画の黄金期の50年代、60年代には、まだ白黒で映画を撮るのが主流でした。カラーで撮れたのは資金にゆとりがあるごく限られた作品のだけ。せっかくミュージカルをカラーで撮れるのなら、色をふんだんに使おう!となったのが1964年公開、ジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』だったりします。 

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日本映画の影響

更に、先日『ララランド』の宣伝の為に来日したデミアンチャゼル監督は、鈴木清順の『東京流れ者のポップな色使いに影響を受けた、と言ってます。

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鈴木清順監督、1966年公開。 

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東京流れ者のワンシーン。

ちなみに先日亡くなってしまった鈴木清順監督はタランティーノジム・ジャームッシュウォン・カーウァイパク・チャヌクなどにも影響を与えていますね。いわゆるB級映画とも呼ばれますが、鈴木清順の独特のセンスは、もっとメジャーな、『アニメ版ルパン三世』にも受け継がれてます。鈴木清順はルパン・テレビシリーズの監修も務めていたそうで、制作現場では宮崎駿とのバトルも頻繁にあった見たいです。そのバトル、見て見たい。笑 

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1985年公開、鈴木清順監督。

テクニカラー

さて、話を戻しましょう。『ララランド』はたくさんの映画を参照しただけあって、衣装を含む美術がいいですね。と思ったらアカデミー賞美術賞を受賞してました。(衣装賞はファンタスティック・ビーストでした) さらに、『ララランド』は上記にもあるようなミュージカル映画の雰囲気を再現するために、あえてフィルムで撮影したそうです。実は劇中の歌の中でもテクニカラーというが歌詞に出てきますね。(テクニカラーアメリカのカラーフィルムの企業と技術の名前です)

個人的にはそこまでカメラワークはビックリしなかったのですが、アカデミー賞撮影賞も取ってます。第86回、87回、88回と3年連続でアカデミー賞撮影賞を受賞したイマニュエル・ルベツキと比較すると、今作はそれほどかな?とやや疑問ですが、ここは専門外なので詳しい方いたらご教示いただけると幸いです。  そういえば、87回のアカデミー賞作品賞の『バードマン』に出ていた頃のエマ・ストーンと比べると、ラ・ラ・ランドエマ・ストーンは本当に綺麗になりましたね。まぁ、役柄とメイクのせいもありますが、随分大人っぽくなりました。

f:id:michischili:20170406153703j:plain 『バードマン あるいは無知がもたらす予知せぬ奇跡』アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、2014年公開。アカデミー賞助演女優賞ノミネート。  f:id:michischili:20170406154045j:plain似たアングルのこちら。本作では、アカデミー賞主演女優賞を受賞しましたね。

ということで、色使いに注目した前編でした!まだ観てない方、後編を公開する前にも、まだまだ劇場で観れますよ! 『ララランド』紹介記事の後編ではライアン・ゴズリング演じる、セブ役のファッションについて書きます。乞うご期待! 

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『たかが世界の終わり』

本日ご紹介する映画は、洋服度控え目になりますが、間違いなくファッション誌等でも取り上げられるであろう若き天才が撮った、おしゃれな大傑作です。

 
グザビエ・ドラン監督ー2017年、2月公開。
 
 
今世界的にも最も勢いがあり、最新作が出る度に話題になる映画監督挙げるとしたら、このグザビエ・ドランは間違いなくトップ5に入る監督です。

『狂い咲きサンダーロード』とヴェトモン

 今回の映画はこちらです。

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狂い咲きサンダーロード

1980年公開。石井聰亙(いしいそうご)監督。

石井聰亙監督が、(今は改名して、石井岳龍になったみたいですね)学生時代の卒業制作として発表した映画です。

 サンダーロード、という架空の都市が舞台。暴走族達が走り回る中、警察の取り締まりはどんどん厳しくなる。そんな中、暴走族達は互いに争うの辞めて人に愛される暴走族になろう、という休戦協定を結びます。

 

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戦う女性経営者。マリメッコの創業者はぶっ飛んでた!映画『ファブリックの女王』

 

一見、大人しいタイプの人に人気のありそうなブランドのマリメッコ。でも創業者のアルミ・ラティアはかなりぶっ飛んだ革新者でした。この映画ではアルミ・ラティアが一人の女性として、世の中の常識と、男社会と、経営者と、そして家族とも戦いながら会社を作り上げた物語を解説します。

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フィンランド発、「マリメッコ」誕生物語の始まり始まり〜

生地屋、マリメッコ 

舞台は1950年代フィンランド。 
のはずですが、この映画は変わった手法で撮られていまして、劇中劇になっております。というものも、アルミを演じる役者やその他の役者がカメラの前で演技をしているのですが、何の前触れもなく、演技を止め、演出家と台本の確認をしたりします。

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演技を止め、台本を読む演出家とアルミの人物像について話すシーン。

「アルミはこの時何を考えてたのかしら」
「どういった演技をすれば彼女の考えを現代に表現できるかしら」等と、
話をしたかと思いきや、すぐにまた演技が始まります。
この手法をとった理由について監督は、「ムダのないミニマルなこの映画の描き方は、予算の問題だけでなく、アルミの実像に迫るのに上手く作用したと思っている
 と言っています。 さて、そんなマリメッコですが、具体的に何が革新的だったのか。映画内でも描かれていますが、1951年に最初のファッションショーを開きます。生地屋さんがです。大事な事なのでもう一度言いますが、マリメッコは創業当時は「生地屋」さんでした。 

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オートクチュールの時代 

当時、すでにパリではファッションショーはありましたが、老舗メーカーのオートクチュール(オーダーメイド)のショーが主流でした。本当に裕福な上流の人達に向けた物ですね。2016年の4月にはこんな展覧会もありましたね。

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パリ・オートクチュール

世界に一つだけの服

 〜芸術は、着れる〜
 
しかし、マリメッコは生地から始まりました。生地の評価は高いが、買う人がいない。
では、生地の素晴らしさを伝える為に洋服にして見せてみよう。という発想で全財産をつぎ込み、ファッションショーを開きました。このショーは大成功に終わりました。
舞台裏にお客さんが大勢押し寄せ、「どこで買えるの?」「今ここで買えないの?」等と高揚した人ばかり。しかしこの時点ではまだ小売店をどこに出すか決めていなかったそうです。計画的、ではないですが、やったもん勝ち、とも捉えられるかもしれないです。 
さて、このショーが重要なのですが、
当時パリで流行っていたオートクチュールはオーダーメイド。アルミの行ったショーは、メーカーが服を予めデザインをし、それを発表する。そして発表された物を量産し、店頭に並んだ物をお客さんが買う、という流れ。所謂プレタポルテの先駆けですね。というかマーケティングの天才ですね。これをざっと年表にしてみましょう。

マリメッコの革新性 

1951年 マリメッコ、初のファッション・ショー

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1960年 ジャクリーン・ケネディマリメッコの服7着購入。
雑誌の表紙で着用し、大きな話題となる

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1965年パリでは、クレージュがミニスカートを発表。オートクチュールではタブーとされていた膝出しをし、一大ブームに。

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1966年イヴ・サンローランがパリ左岸にプレタポルテの店をオープン。
プレタポルテが本格的に始動。(詳しくはこちらのブログもどうぞ)
同時期にイギリスで登場したモッズの登場も地域間を超えて呼応するカルチャーとして参考になります。
となっております。
こうして名だたるハイブランドと比較してみても、アルミ(マリメッコ)の時代を読む力、消費者の理解、自社の顧客を作り出す、と言ったマーケティングセンスの良さがわかりますね。そしてあまりにも先駆的であった為に、彼女は多くの人と衝突をしてしまいます。この映画は、産みの苦しみと、美の探求をした一人の女性の生き様がしっかりと、現代風にアップデートされて描かれています。本日も最後までご覧いただきありがとうございました。コメントの書き込み、その他SNSでのシェアなどして頂けるととても嬉しいです!それではまた!
 
2016年、10月からはitunes先行配信され、
12月16日よりDVDが発売されます。クリスマスギフトか、年末見る映画にもいかがですか? 

「ファブリックの女王」予告編 

ヨールン・ドンネル監督、2016年公開。

 

一流の映画は、衣装も一流だった。『8 1/2』で学ぶスーツスタイル

 一流の映画は、衣装も(スーツの着こなしも)一流だった。体型にあったサイズ、細すぎずダボダボしすぎないシルエットに、黒縁メガネや、サングラスなどの最低限の小物。今ではお洒落なスーツスタイルに欠かせない上記の着こなしポイントも、ルーツを辿っていくと実はこの映画が起源ではないかと思えるのです。

8 1/2の衣装

8 1/2フェデリコ・フェリーニ監督、1963年公開。
黒スーツと題して2つの映画を紹介してきましたが、いよいよ真打ち登場。 
8   1/2 [Blu-ray]

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フェリーニは言わずと知れた、イタリア映画界を代表する映画監督です。

巨匠と言われ、フェリーニの映画は後世に大きな影響を与えましたね。
その中でもこの8 1/2は映画史に残る傑作、とも言われてます。

グイド(マルチェロ・マストロヤンニ)のスーツ

主人公、グイドは売れっ子映画監督。SF大作の製作を控えてますが、一向にアイディアが固まらない。心身ともに疲れきったグイドは温泉地で休養をしながら映画の構想を練ろうとします。しかし、彼を追いかけるプロデューサー、俳優、愛人、奥さん、神父などと、多くの人が温泉地まで詰めかけ大騒ぎに。周りの意見に振り回され、グイドは現実逃避(妄想)を始めます。この映画は、現実の世界と、妄想の世界がカオスに入り混じる具合がとても面白く描かれてます。更に、これは映画監督であるフェリーニ自身の話でもあるんです。 次回作の案が浮かばず、取り巻きがうるさい。俺はどうすれば良いんだ?何がしたいんだ?まてよ、いっそのこと、この苦悩その物を映画にしてしまえば良いじゃないか!そうして、映画史に残る古典として8 1/2はできたのです。さて、それではグイドの格好を見てみましょう。 

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モテそうなオジさんですねえ。この人が被ればサングラスもサマになります。

マルチェロ・マストロヤンニコリン・ファース

この顔、ちょっと似てません?スーツ特集の第一弾で紹介した映画、シングルマンの主役の教授に。

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 スーツ特集での共通点を挙げると、
•サイズ感
•シルエット
•少しの小物
の3つのポイントにまとまる、と思います。
自分の体型にあったサイズ、細すぎず、かつ、ダボダボしすぎないシルエット、そして、黒縁メガネや、サングラスなどの最低限の小物。

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洋服において、色や素材ももちろん重要ですが、この3つに気をつけるだけで、とても綺麗な着こなしが完成する、とても良い例だと思います。 

フェリーニの影響

恐らくシングルマンを撮ったトム・フォードは、この8 1/2のスタイリングに影響を受けてると思います。いや、むしろこの映画、当時のアカデミー賞衣装賞も受賞してますが、映画史に残る傑作と言われるだけあって、様々なジャンルのクリエイターに多かれ少なかれ何かしら影響を与えてます。
もっと言うと、現代の僕達が思いつく事は大体既に先人がやり尽くしたアイディアである事が多い、と謙虚な気持ちになりますね。 さて、スーツ特集いかがでしたか?これを機会に是非、フェリーニやその他の映画もご覧になってみて下さい!

michischili.hatenablog.com 

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ダサ・カッコイイ?黒スーツがイケてる『レザボア・ドッグズ』

映画オタクのタランティーノによる強盗映画。制服のように登場人物達が黒スーツをきているのがまたカッコいいんです。しかもそれぞれ微妙に違う着こなしなのがまた良い。低予算ながらも、工夫を凝らして成功した事例ですね。
レザボア・ドッグス [Blu-ray]

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ダサ・カッコいい?映画オタクの監督、タランティーノ

今や大ヒット映画監督の1人となったタランティーノのデビュー作タランティーノは香港のカンフー映画、日本のヤクザ映画、ゴダール等が好きなアメリカの映画オタクです。レンタルビデオ屋で働きながら、ほぼ自主制作に近い形で撮ったこの映画で強烈なデビューを果たします。「アメリカ映画は金の臭いがして、単純な作りでダメだ」という人もいますが、タランティーノは今のアメリカ映画界の中でも、いい意味で好き勝手やりながら大作を任されてる稀有な存在です。 この映画、オープニングがカッコイイのでそちらをご覧ください。 

www.youtube.com

低予算感は出てますがこの頃からタランティーノらしさが全開ですねえ。カッコ良いというよりは、ダサカッコイイというのが近いもしれないですね。 レザボア・ドッグスの男達宝石強盗をするために集められた男達。互いの素性はわからず、コードネームで呼び合う。しかし、宝石強盗は失敗に終わる。負傷したメンバーもいるなか、裏切り者が出たという情報が入り、男達は互いに銃を向けあう。 

ハーヴェイ・カイテルと黒スーツ

ハーヴェイ・カイテル演じるミスターホワイトはアニエスベーのスーツを着ていたようですが、それ以外の役者はほぼ安いスーツか、人によってはスーツでは無く、黒のデニムを履いているようです。それ以外にもキャラクターによって微妙な差が。

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ステーヴ・ブシェミ演じる、ミスターピンクボタンダウンシャツを着てます。

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 ティム・ロス演じるミスターオレンジはボストン型のサングラスをかけてます。

細身の黒スーツ

ディテールの差はあれど、細身の黒スーツをユニフォームとして着るとかっこいいですね。この細身のネクタイの具合や、サングラスやデニム、人によってはブーツを合わせてしまう具合が、絶妙です。黒のスーツに黒のネクタイといえば、一歩間違えると喪服に見えてしまいますが、素性のわからないホワイトさんや、ピンクさん達は強盗をするのに、「あえて黒スーツを着てる」感がおしゃれに見えるんでしょうね。うまい演出を考えましたね、タランティーノ

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と、思ったら監督本人も、ちょい役でちゃっかりミスター・ブラウンとして出演してます。この笑みがなんとも言えないですね。完全に楽しんでます。さて、物語は明るいオープニングで始まりますが、その後緊迫したムードが漂い始め、銀行強盗が失敗に終わったことがわかります。タランティーノ特有の、キャラクターにべらべら長台詞を言わせる、また、時間が飛んだり戻ったり、という演出が低予算がながらも物語に良いリズムを生んでくれてます。果たして、裏切り者は誰なのか。タランティーノ演じるミスター・ブラウンはどんな活躍をするのか。長編デビュー作とは思えない素晴らしいこの映画は、この服装無くしては成立しなかったと思います。スーツの着こなしにそんなに差ってあるの?と思ったそこのあなた。他にもシンプルなスーツがイケてる映画を紹介していますので、ぜひご覧ください!巨匠、フェリーニによる『8 1/2』があり、michischili.hatenablog.com

フェリーニから時代を経て引き継がれたスーツ・スタイルに、『シングル・マン』もあります。しかもこの映画は現役のファッション・デザイナーが監督をしてるので、そこも見所です。michischili.hatenablog.com本日も最後までご覧いただきありがとうございました。コメントの書き込み、その他SNSでのシェアなどして頂けるととても嬉しいです!それではまた!