ルイ・ヴィトンの新デザイナー、ヴァージル・アブローって誰?
街中で皆様見かけた事は一度くらいはあると思います、このブランドoff white。高級ストリート・ウェアというコンセプトで若者に人気のブランドです。
この度、Off-Whiteの設立者であるヴァージル・アブロー(以下、ヴァージル)が、前任者キム・ジョーンズに代わり、ルイ・ヴィトン・メンズウェアのアーティスティック・ディレクターに就任しました。 Off-Whiteのデザイナーというのは知っていたものの、それ以外はあまり彼の事をそこまで知らなかったので、この際調べてみました。
このニュース、単なるファッションの話題に見えますが、このニュースの背景を理解すると、ポップ・カルチャーの最前線が見えてきます。ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、ジャンルを跨いだ新しい交流が怒涛のように生まれています。ヴィトンやラグジュアリーブランドのマーケティング的視点から考えると、ヴァージルの起用はブランディングの一環とも捉えられますね。ではヴァージルって何者なんでしょうか?
はじめに
長らく更新が滞ってしまいましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?これまで映画でファッションを解説する、という視点でブログを書いてました。とは言え、自分の興味や守備範囲が広すぎる。この際、ポップカルチャー全般✖︎マーケティングのガイドマップのようにしよう、という事でリニューアルをしました。もっと言うと、最前線のポップカルチャー≒最前線のクリエイティブな人の集まりとも見れます。最前線を追いかける人の参考になれば、と思います。
ヴァージルと現代アート
ヴィトンのクリエイティブ・ディレクター就任に先立ち、ヴァージルが3月16日より広尾で初の個展を開催してました。という事で、今日会期終了ですが先日駆け込んできました。この広尾にあるカイカイ・キキ・ギャラリー、現代アーティストである村上隆氏が運営してるギャラリーです。こちらはヴァージルと村上の共同で展覧会を開催した時の画像。
注)真ん中はジャスティン・ティンバーレイクです。
村上氏曰く、「ヴァージルは単なるデザイナーではなく現代アートにも通じる物作りをしている」との事でした。展覧会を見た限り、正直「現代アート」として評価されるのかちょっと疑問を持ってしまいましたが、「消費社会」への言及と「企業ロゴ」の多用はある種、現代的だな、と思いました。ちなみに村上隆と言えば、日本画をルーツにしながら花柄のキャラクターやドクロなどをモチーフに描く事で国内より海外で人気のアーティストですが、村上隆も実はLVと仕事をしていました。
ヴィトンではここ数年、積極的に外部のデザイナーやアーティストを起用した限定商品の企画を行なっています。こういった積み重ねの上で、外部のクリエイターの起用が効果的であると判断されたのでしょう。限定商品だけでなくメンズウェア全体の責任者としてヴァージルが選ばれた理由にはこういう背景もあるようですね。
ヴァージルと音楽
ヴァージルは現代アートだけではなく、音楽業界にも大きな繋がりがあります。カニエ・ウェストというヒップホップ・ミュージシャンを皆様ご存知でしょうか。
左)ヴァージル・アブロー
カニエ・ウェストは2000年代〜今に至るまで、ヒップ・ポップのみならずポップ・ミュージックの世界では最先端の音楽を作る事で知られています。本人自身ラップをしたり歌ったりしますが、彼はソウル・ミュージックをサンプリングした甘く、どこか懐かしさを感じさせるトラック(曲)作りに定評がありました。デビュー以降も様々な音作りにチャレンジしているクリエイターです。
ヴァージルとカニエは同じシカゴ出身。しかも2人ともフェンディにてインターンをしていました。ヴァージルは以前カニエの設立したファッション・ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めていました。そして今では幻となってしまいましたが、カニエもヴィトンとコラボレーションをしていました。
そしてカニエの、3枚目のアルバムジャケットを手掛けたのは、そう村上隆です。
最先端の音楽と現代アートもこういう風に有機的に繋がっているんですね。
ヴァージルと建築
ヴァージルはところでどこでデザインについて学んでいたのでしょうか。調べると、アメリカのイリノイ工科大学で、建築を学んでいました。そこでレム・コールハースに学び、プロダクトのコンサルティングも学んだそうです。このレム・コールハースは建築界では建築家の建築家とも言えるような存在で、徹底したリサーチから提案される新しい建築の在り方は建築家だけでなく多くのクリエイターにも影響を及ぼしています。
そしてコールハースはヴィトンとは競合に当たる、プラダのマーケティングに長年携わっています。具体的にはミラノコレクションの会場設計や、プラダ財団や一部店舗の設計も手掛けていますし、プラダのプロジェクトをまとめてこんな本も出版しています。
Rem Koolhaas: Projects for Prada
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建築側の視点ですと、こちらの美術手帳に掲載されているヴァージルのインタビューがより詳しいです。ファッション・ブランドのインテリアデザインについて詳しい建築家、浅子佳英さんがインタビューをしておりまして、こちらも勉強になります。
ヴァージル・アブローが語る自身の「DNA」。世界初個展「”PAY PER VIEW”」で見せるものとは?|美術手帖
最後に
いかがでしたか?このように、ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、様々なジャンルを超えて新しい交流が生まれています。そして多くのグローバル企業のマーケティング企画ではこう行ったポップ・カルチャーやストリート・カルチャーの人間に仕事を依頼するケースが年々増えています。日本だとまだまだヒップホップを身近に感じられず、聞き慣れていない人もいるようです。今後このブログでは、ポップ・カルチャーがいかに様々な分野のクリエイターや企業のマーケティングと繋がっていくのかを紹介していきたいと思います。
興味がある方はこちらの記事もどうぞ!ヒップホップ発のヘッドホン・ブランドが、Apple史上最高額で買収されるに至った経緯を描いたドキュメンタリーを紹介してます。
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シーズン性がある異色の古着屋、Ambivalence
代官山の新名所。古着屋Ambivalence
師走ですね。
4月以降の更新となってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょ
映画もいくつか観ましたが、今回はとあるお店をご紹介致します。
Ambivalence
音楽だけじゃない!『ラ・ラ・ランド』は開襟シャツとスペクテイター・シューズも魅力的!
はじめに
そもそも開襟シャツとは?
開襟シャツのもう1つの特徴ですが、
開襟シャツ
シャツの起源
スペクテイター・シューズ〜または、コンビ・シューズ〜
ジャズ・ファッション〜フランク・シナトラの場合〜
フランク・シナトラ-1943年の写真
ジャズ歌手、ミュージカル俳優、そして当時のアメリカを代表する大スターにしてアイドル、フランク・シナトラの写真です。セブが崇拝してる部類のジャズミュージシャンではないですが、開襟シャツと、靴もうっすらとですが、2色使いになってる写真をみつけました。とういうことで、前編後編に分けてお送りした『ララランド』特集、いかがでしたか?色々な意見があるラ・ラ・ランドですが、僕は楽しめました。舞台ミュージカルの映画化や、ディズニー映画ではない、オリジナル作品なのに世界中で大ヒットを連発。しかも製作は、ワーナーや20世紀フォックスなどのハリウッド6と呼
音楽だけじゃない!色使いも魅力的、映画『ラ・ラランド』
ララランドの色使い
ミュージカルのオマージュ
日本映画の影響
東京流れ者のワンシーン。
ちなみに先日亡くなってしまった鈴木清順監督はタランティーノ、ジム・ジャームッシュ、ウォン・カーウァイ、パク・チャヌクなどにも影響を与えていますね。いわゆるB級映画とも呼ばれますが、鈴木清順の独特のセンスは、もっとメジャーな、『アニメ版ルパン三世』にも受け継がれてます。鈴木清順はルパン・テレビシリーズの監修も務めていたそうで、制作現場では宮崎駿とのバトルも頻繁にあった見たいです。そのバトル、見て見たい。笑
1985年公開、鈴木清順監督。
テクニカラー
さて、話を戻しましょう。『ララランド』はたくさんの映画を参照しただけあって、衣装を含む美術がいいですね。と思ったらアカデミー賞美術賞を受賞してました。(衣装賞はファンタスティック・ビーストでした) さらに、『ララランド』は上記にもあるようなミュージカル映画の雰囲気を再現するために、あえてフィルムで撮影したそうです。実は劇中の歌の中でもテクニカラーというが歌詞に出てきますね。(テクニカラーはアメリカのカラーフィルムの企業と技術の名前です)
個人的にはそこまでカメラワークはビックリしなかったのですが、アカデミー賞撮影賞も取ってます。第86回、87回、88回と3年連続でアカデミー賞撮影賞を受賞したイマニュエル・ルベツキと比較すると、今作はそれほどかな?とやや疑問ですが、ここは専門外なので詳しい方いたらご教示いただけると幸いです。 そういえば、87回のアカデミー賞作品賞の『バードマン』に出ていた頃のエマ・ストーンと比べると、ラ・ラ・ランドのエマ・ストーンは本当に綺麗になりましたね。まぁ、役柄とメイクのせいもありますが、随分大人っぽくなりました。
『バードマン あるいは無知がもたらす予知せぬ奇跡』アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、2014年公開。アカデミー賞助演女優賞ノミネート。 似たアングルのこちら。本作では、アカデミー賞主演女優賞を受賞しましたね。
ということで、色使いに注目した前編でした!まだ観てない方、後編を公開する前にも、まだまだ劇場で観れますよ! 『ララランド』紹介記事の後編ではライアン・ゴズリング演じる、セブ役のファッションについて書きます。乞うご期待!
『たかが世界の終わり』
本日ご紹介する映画は、洋服度控え目になりますが、間違いなくファッション誌等でも取り上げられるであろう若き天才が撮った、おしゃれな大傑作です。
『狂い咲きサンダーロード』とヴェトモン
戦う女性経営者。マリメッコの創業者はぶっ飛んでた!映画『ファブリックの女王』
生地屋、マリメッコ
演技を止め、台本を読む演出家とアルミの人物像について話すシーン。
オートクチュールの時代
パリ・オートクチュール
世界に一つだけの服
マリメッコの革新性
一流の映画は、衣装も一流だった。『8 1/2』で学ぶスーツスタイル
一流の映画は、衣装も(スーツの着こなしも)一流だった。体型にあったサイズ、細すぎずダボダボしすぎないシルエットに、黒縁メガネや、サングラスなどの最低限の小物。今ではお洒落なスーツスタイルに欠かせない上記の着こなしポイントも、ルーツを辿っていくと実はこの映画が起源ではないかと思えるのです。
8 1/2の衣装
フェリーニは言わずと知れた、
グイド(マルチェロ・マストロヤンニ)のスーツ
マルチェロ・マストロヤンニとコリン・ファース
フェリーニの影響
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ダサ・カッコイイ?黒スーツがイケてる『レザボア・ドッグズ』
ダサ・カッコいい?映画オタクの監督、タランティーノ
今や大ヒット映画監督の1人となったタランティーノのデビュー作
低予算感は出てますがこの頃からタランティーノらしさが全開です
ハーヴェイ・カイテルと黒スーツ
ハーヴェイ・カイテル演じるミスターホワイトはアニエス・
ティム・ロス演じるミスターオレンジはボストン型のサングラスをかけてます。
細身の黒スーツ
ディテールの差はあれど、細身の黒スーツをユニフォームとして着るとかっこいいですね。この細身のネクタイの具合や、サングラスやデニム、人によってはブーツを合わせてしまう具合が、絶妙です。黒のスーツに黒のネクタイといえば、一歩間違えると喪服に見えてしまいますが、素性のわからないホワイトさんや、ピンクさん達は強盗をするのに、「あえて黒スーツを着てる」感がおしゃれに見えるんでしょうね。うまい演出を考えましたね、タランティーノ。
と、思ったら監督本人も、ちょい役でちゃっかりミスター・ブラウンとして出演してます。この笑みがなんとも言えないですね。完全に楽しんでます。さて、物語は明るいオープニングで始まりますが、その後緊迫したムードが漂い始め、銀行強盗が失敗に終わったことがわかります。タランティーノ特有の、キャラクターにべらべら長台詞を言わせる、また、時間が飛んだり戻ったり、という演出が低予算がながらも物語に良いリズムを生んでくれてます。果たして、裏切り者は誰なのか。タランティーノ演じるミスター・ブラウンはどんな活躍をするのか。長編デビュー作とは思えない素晴らしいこの映画は、この服装無くしては成立しなかったと思います。スーツの着こなしにそんなに差ってあるの?と思ったそこのあなた。他にもシンプルなスーツがイケてる映画を紹介していますので、ぜひご覧ください!巨匠、フェリーニによる『8 1/2』があり、michischili.hatenablog.com
フェリーニから時代を経て引き継がれたスーツ・スタイルに、『シングル・マン』もあります。しかもこの映画は現役のファッション・デザイナーが監督をしてるので、そこも見所です。michischili.hatenablog.com本日も最後までご覧いただきありがとうございました。コメントの書き込み、その他SNSでのシェアなどして頂けるととても嬉しいです!それではまた!