映画とドラマとファッションと

ブログを初めて早6年。平成生まれ、米国育ちの映画オタク。元パリコレブランド勤務で今はマーケターやってます。

『狂い咲きサンダーロード』とヴェトモン

 今回の映画はこちらです。

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狂い咲きサンダーロード

1980年公開。石井聰亙(いしいそうご)監督。

石井聰亙監督が、(今は改名して、石井岳龍になったみたいですね)学生時代の卒業制作として発表した映画です。

 サンダーロード、という架空の都市が舞台。暴走族達が走り回る中、警察の取り締まりはどんどん厳しくなる。そんな中、暴走族達は互いに争うの辞めて人に愛される暴走族になろう、という休戦協定を結びます。

 

 

 

工場夜景とMA-1

 

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今では工場夜景の写真集が出たり、工場夜景ツアーが開催されるまでに至りましたが、1980年当時にこんな退廃的な世界感を撮っていたのは、アキラ(1982年〜漫画連載開始)やマッド・マックス2(1981年公開)に先駆けていた、とも言えるかもしれません。

 

 

さて、この映画では脇役の健を取り上げます。

魔墓呂死のメンバーやその他の暴走族たちは革ジャンなどを着ていますが、健だけはMa-1を着こなしてます。が、どんなに画像を探しても健の写真が見つかりません。汗。

なので、皆様本編をみてください!

 

 

ちなみにMA-1とは、アメリカ空軍のパイロットの為のフライト・ジャケット(上着)でした。アルファ・インダストリーズのMA-1が一番有名ですね。

 

 

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狭いコクピットの中、ヘルメットを被り、-10度〜+10度の寒さに対応出来る上着として当時の技術を投入して開発されました。これ以前はレザーのフライトジャケットが主流でしたが、飛行機がプロペラ機からジェット機へと移行すると、飛行高度も高くなりました。わずかな水滴でも高高度だと氷結してしまう、とのことでナイロン素材で作られました。着丈が短く、後ろ身頃の方が前身頃より短いのも、座席に座った状態での動き安さを追求した結果です。

裏地がオレンジ色なのは、遭難した時にひっくり返すとすぐに見つけてもらえる、という理由があるみたいです。等等。

メンズファッションは、形に理由があって、良くも悪くも独特の発展があって面白いですね。

 

MA-1とヴェトモン

 

さて、このMA-1、去年(2015年)の冬から今年にかけて、原宿や渋谷にいるような若者達に流行ってます。 去年からの流行りの特徴は、女性で着る人が増えたのと、サイズ感が大きい、という点が挙げられます。

 

その流行りを作ったのは今パリコレで話題のVetements(日本ではヴェトモン、と読みます。フランス語で「服」というそのままのネーミングですね)

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さて、そのヴェトモン、写真を見ていただくとわかるかと思いますが、極端に大きいサイズ感にしたり、肩から落としたり、とMA-1を着崩してます。

 

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このヴェトモンのデザイナーを務める、デムナ・ヴァザリアは旧ソ連グルジアの出身で、あのマルタン・マルジェラに在籍した後、ルイ・ヴィトン等を経て、2014年に自身のブランドを立ち上げたばかりです。

 

ここ数年、ハイ・ファッションの世界ではスター性のあるデザイナーがあまり居なかった中、ヴェトモンの出現と、新生グッチを率いるアレッサンドロ・ミケーレの出現は大きな話題となっています。今ではこの二人から目が離せない業界の人は多くいます。(デムナは今ではバレンシアガのデザイナーも兼任しています。)

 

ヴェトモンの写真2枚をみただけでなんとく雰囲気が伝わるかと思いますが、結構やんちゃです笑。モデルたちは、ヨーロッパの不良のような若者を起用しています。

 

スティーヴ・マックイーンナタリー・ポートマン

 

さて、少しずつ話を戻しましょう。 

ヴェトモンはMA-1の新しい着こなしを提案した。サイズ感を極端に大きくして、特に女性が着るとより新鮮、となっています。で、ここでいきなり狂い咲きサンダーロードと繋げるとさすがに強引なので、補足が必要ですね。

 

MA-1の着こなしがきちんと描かれているのは、スティーブ・マックイーン主演の「ハンター」という映画です。

カジュアル・ファッションでは、未だにこの人を超える着こなしを見たことがありません。キング・オブ・クールと言われるのも頷けますね。

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女性がMA-1を着るということであれば、「レオン」のナタリー・ポートマンがいますね。

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狂い咲きサンダーロード」は、以前もこのブログで紹介した「さらば青春の光」にも通じる要素があります。「さらば青春の光」に出てくるモッズ達はM-51という、これまたアメリカ軍の上着を着る暴走族たちですね。(さらば青春の光の方が古いので、狂い咲きサンダーロードは日本版さらば青春の光、とも言えるかもです)

michischili.hatenablog.com

 

狂い咲きサンダーロード」は、ファッションの要素はやや少ないですが、世界感、尖った若者などが出てくる映画としてカルト的な人気を誇っています。

更に、この映画、泉谷しげるが美術と音楽を担当していまして、その要素も映画の良さを引き立てるのに一役買っています。

 

北野武や、タランティーノも絶賛しているような映画、テンションをあげたい時にいかがですか?