英語とベネチア式航海術
なんか知らないけど帰宅して食器を洗っていたら、
ふと書きたい衝動にかられたので書く。僕の苦労話をしたいわけでも、恨みをぶちまけたいわけでもなく、ある意味昔の自分に対して言い聞かせてるような文章です。
なので特にオチはない。
英語
日本で生まれてから、アメリカと日本を行き来した僕はいわゆるバイリンガルだ。
合計9年、しかも言葉を覚えるのに最も適しているとされている0歳から13歳の間に住めたのでその点はタイミングと運が良かったと言える。
幼稚園から現地の子達と混じっていた僕は英語を当たり前に、そしてどうやら「楽」をして覚えたと思う人もいるだろう。実際、中学1年生になり帰国した僕を待っていたのは、
「英語ができるってかっこいいね」「英語ができるのうらやましい」といった言葉だった。
僕はその都度、いらつきを抑えていた。
知り合いも、親戚も居ない外国にあなたは住んだことがあるのか。
当たり前のことが当たり前に通じない環境に身を置いたことがあるのか。
そもそも、子供の場合は自らの意思で留学するのではく、
親の仕事の関係である種外国に強制的に移住することになる。
子供にとっては、毎日遊ぶおもちゃや友達、家や学校周辺の風景、出される食事など、
「それ」がどんなに小さな物でも「それ」がある日突然無くなるのは、
すなわち「世界」が無くなるのと同等の恐怖に相当する。
「英語ができていいね」という人達はそんな経験をしたことがあるのか。
もちろん、「英語ができるっていいね」と軽く言った人達はおそらくそこまでは考えてはいまい。そして、おそらくそういった発言も悪気なく言っているにすぎない。
年を取ってからはそうやって客観してみれるようになった。
しかし、あえて言おう。
僕は楽をして英語を覚えては無い。
「それ」を取り戻す為に英語が「必要」だったから覚えた。
「それ」とは生まれた日本、育った日本で
あたり前のように過ごしていた日常のことだ。
ある日突然、地中深く張り巡らされた根から切断された僕は、
新しい土に再度根付く必要があった。
その為に必要なのがたまたま「英語」だったわけだ。
住んだ国が英語圏でなかったのであれば、おそらくその国の言語を覚えていたであろう。「英語が話せるようになりたい」という願望は否定しない。
しかし、そういう願望を持つ人達は果たして英語が必要なのか。
ベネチア
彼らは水上都市を築き、ヨーロッパで教皇派や皇帝派という人口も土地も、資源もより巨大な相手と対等にやりあい独立を保っていた。水上都市では野菜も育てられず、家畜も育てられない。資源が無い彼らは生きる為に「必要」だった為、航海術を男達に教え、海に出て貿易で生計を建てた。
帰国子女に対して、「英語ができていいね」
というのは
ベネチア人に対して、「航海できていいね」
というのと似てる気がする。航海がしたければどうぞ、航海の勉強をしてください。
「できていいね」という人達の中には、本当に「できる」ようになる人もいるだろう。
おそらくそういう人達は「できる必要」がある人たちだと思う。
「外国語を覚える一番の近道は、外国の恋人を作ることだ。」という言葉があるが、ある種的を得ている。
あなたは、船に乗れるようになりたいのでしょうか。船に乗れたらどれだけ楽しいでしょう。しかし物事には困難はつきものです。船酔いをすることがあれば、船に乗ってから自分の位置を見失うこともあります。ただ船に乗ることだけが目的だと、これらの困難が嵐のようにあなたの船に襲いかかります。
それともあなたは船に乗って大海原を駆け巡り、新しい世界を見たいのでしょうか。新しい世界が見たければ嵐も耐えしのげることができます。そして新しい世界を見て、その地に根を下ろせばそこからあなたの「それ」探しが始まります。
ある日突然海に投げ出され、生きるために泳ぐことを覚えた僕は、ついに船に乗り長い航海をすることができるようになりました。新しい世界に根付けた僕はまた次の世界に行きたい為、今は自らの意思で星や風や鳥を頼りに次の世界への航海に出られます。
大海原に出なくてもいい。
人によっては大海原に出ることで様々な「それ」を経験できるし、
同じに地に深く根を張っている人は、よってくる蝶々や蜂、風の暖かさや冷たさなどその人にしか感じられない「それ」があるはずだ。
憧れや羨むことは決して悪くはない。
そこで止まってしまい、自分が育たないのを日光の性や、水分不足の性にするのくらいなら、蝶々や蜂と会話をしてみればいい。
あなたの「それ」を見つけよう。「それ」が十分足りていれば、「それ」を大事にしよう。とにかく、あなたの世界を作るのは「それ」であり、「それ」を周りの人や、次の世代に共有できるのは素晴らしいことだと思う。自分だけ芽がでるのも良いが、自分以外にも多く芽が出れば辺り一面景色が変わるだろう。そしてこのブログが一つのきっかけとなり、新たな芽がたくさんでて、いずれは景色そのものを変えてしまえば本望だ。
ということで今年も宜しくお願いします。
ベネチア共和国についてはこちらの本がオススメです。
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