映画で学ぶファッション史

生きたファッションは映画やドラマで学べる! 洋服屋による映画レビュー。 チームで映画も作ってます。

【本5】クール・ルールズ〜若者文化を読み解く手引き〜

 

20世紀ーマスメディアによるアメリカの覇権が顕になった時代ー 新しい時代の新しい貴族としてのハリウッドスター、スポーツ選手、ミュージシャン、アーティスト、作家などに共通する「美意識」を多角的に分析。そう、この本では「クール」という新しい美意識を分析している。そしてその美意識のルーツは奴隷として労働させられたアフリカ系民族にある。

 

クール・ルールズ

クール・ルールズ

 

身体的服従の中でいかに魂だけは征服させられないか。想像を絶するほどの劣悪な歴史の中から彼ら(彼女ら)はブルースを生み出す。ブルースとは文字通り、ブルーな気分、または哀れみ、泣きの要素が大きな割合をしめる音楽である。 そしてこのブルースは後にジャズ、ロック、ヒップホップと20世紀を代表するようになる音楽ジャンルへと派生していく。 社会的な弱者として、奴隷達は白人達に表向きには従がった。しかし心では軽蔑し、黒人同士では連帯を強める。この抑圧的な白人達を排他し、黒人同士で連帯するのが現代の「クール」のルーツといえる。

 

 

50年代は細身の黒いスーツをビシッときるジャズメンがクールだった。 60年代はダボダボな服にロン毛な出で立ちでクラシックばりの展開をみせるプログレロックやサイケデリックなロックを演奏、または聞くヒッピーやビート世代がクールだった。 70-80年代はその反動としてモヒカンやスキンヘッドで下手くそでもいいというパンクが現れ、80-90年代はサンプリング、グラフィティ、ブレイクダンスなどをひっくるめたヒップホップがついに登場。 見た目や音楽的には共通点はないが、「排他的連帯感」「快楽主義」「無関心の装い」そしてアメリカで支配的な倫理観である、プロテスタント的な価値観(質素に堅実に暮らし、労働をすることが善)に対抗するという考えなどは共通してる点として見られる。

 

 

 

ここでいう快楽主義とはドラッグとセックスの話ですね。本書では、各時代にどんなドラッグが流行っていたか、または若者達がどう恋愛、またはセックスをしていたかなども細かく記述されてる。どの時代においても「クール」である為には、自分の親世代が眉を潜めるようなある種、「自傷的な行為」が求められる。だから若者たちは自傷的な行為をし、互いにその行為を見せつけ連帯し、親世代をある種「排他」する。

 

 

 

「排他的連帯感」「快楽主義」「無関心の装い」をまとめるとこんな感じになる。

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「そういえば最近あいつあんな危ない事もやってるしいよ」

「クール!」

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「かっこいい」とはなんぞや。 と気になる方、そして20世紀アメリカカルチャーに興味のある方、クール・ルールズオススメです。とにかく色んな人や話題(ジェームズ・ディーンポール・ニューマンも出てくれば女性関係で話題となったケネディさんやクリントンさんも)が出てきます。

 

最後の訳者後書きで気づきましたが、このルールズというタイトル、クールの決まり事(rules)という意味とクールが支配(rules)するという意味を両方かけてるんですね。この本を読み終わると実際に現代の社会は「クール」な価値観が文化のみならず、政治にも広く深く根ざしているのがわかる。21世紀の資本主義社会の中でも「クール」の支配はまだまだ続きそうだ。

 

 

※スケートカルチャーやXGames、またパルクールなどと言ったストリートカルチャーが一切触れらてなかったのは唯一気になる点ではあるが今後これらを含めた分析が出ることを期待する。もしくは自分が書いてみよう