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映画で学ぶファッション史

生きたファッションは映画やドラマで学べる! 洋服屋による映画レビュー。 チームで映画も作ってます。

【映画34】ル・アーヴルの靴磨き~イギーポップ顔負けの老パワー~

 

 

映画『ル・アーヴルの靴みがき』予告編 - YouTube

2011公開。監督はフィンランドを代表するアキ・カウリスマキ

 

フランス郊外の港町、ル・アーヴルで靴磨きとして働く老人マルセル。長年連れ添った妻、イドリッサと質素な生活をしている。質素といえば聞こえはいいが、現実は厳しくその日のバゲットや食材を買えるほどの稼ぎもない。顔馴染みである近所のパン屋と食材屋ではツケで買い物をしようとする為、マルセルの事をよく思う者はいない。妻にも、近所の人たちにもあまり偉そうに振る舞わず、どこか頼りないマルセルはいわゆるヘタレとして描かれている。

 

さて、ある日こののどかな港街にアフリカから密入国者を乗せたコンテナ船がやってくる。一人の少年をのぞいて、コンテナの中の密入国者は全員捕まった(保護?)。そしてのんびりとサンドイッチとゆで卵の弁当を食べようとしていたマルセルとこの少年が出会い、マルセルがこの少年をかくまうことになる。

 

時同じくして、イドリッサが原因不明の病気で入院してしまう。動揺しながらもお見舞いに行き妻を励ますマルセルは、妻がいないと何もできないと改めて気づく。それがわかってるイドリッサはマルセルに毎日見舞いに来る必要はない、迎えにくる時はあの黄色のワンピースを持ってきてね。とお願いをする。尻に引かれているんですが、これを期に少しシャキッとしてね!と激励しているようですね。

妻の病気とアフリカから来た少年との出会いを期に大人の階段をのぼり始めるマルセル。そして執拗に少年の行方を追う警察。果たしてマルセルはどうなるのか。クスリ、と笑える場面がちりばめられた濃すぎない、けれど味のあるヒューマンドラマ。

 

【感想】

アキ・カウリスマキの長編を初めて見ましたが、この人の素朴な人物の描き方がとても日本人好みだなあと思いました。(アキさんは小津安二郎の影響をうけているみたいですね、こんど見てみよう。)

マルセルの住む家の台所や、服にアイロンをかける場面、町中のバーで一杯飲むシーン、おいしそうなゆで卵を今から食べようとする瞬間など細かい要素がしっかり描かれているのがとても印象的。その部分だけみると宮崎駿の映画にも近いかもしれません。(もちろんファンタジー要素はほぼないです)しかし、この映画は全編フランス語で会話がされていて、登場人物はほぼ全員老人。とあるロックバンドが町中のバーで久々の再結成ライブをする場面に出るバンドメンバーもほぼ全員白髪。

 

そう宮崎駿の映画は少女が主人公の場合が多く、その周りに老若男女を描くのに対して、この映画では9割型の登場人物が老人なのです。そしてドタバタやドラマチックな展開もある宮崎さんに対して、アキさんのこの映画はド派手な展開や語りはありません。前述した台所やアイロンなどの素朴なシーンも歳を重ねた人が演じるから深みのあるリアリティ立ち現れるのです。味のある老人達がイキイキと人生を謳歌する。

 

ル・アーヴルの靴みがき 【DVD】

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全編に漂う優しさが映画を見終わった後にも残り、イギーポップ顔負けの老パワーに元気を貰える素敵な作品です。