映画で学ぶファッション史

生きたファッションは映画やドラマで学べる! 洋服屋による映画レビュー。 チームで映画も作ってます。

【映画31】グランド・ブダペストホテル〜語らぬカリスマと聖☆お兄さん〜


映画『グランド・ブダペスト・ホテル』予告編 - YouTube

 

【あらすじ】

 かつてのズブロッカ共和国には、大金持ちの老女達がこぞって贔屓にしていた豪華ホテルの名コンシェルジュがいた。名はグスタフ・H。

そんな彼の元で新しくロビーボーイとして働くことになった少年ゼロ。童顔な少年ゼロは毎朝ペンでチョビひげを描きグスタフ・Hの指導の元、大人の世界へと足を踏み入れる。

 

ある時グスタフ・Hのことを気に入って仕方がない超大金持ちの未亡人、マダムDが何者かによって暗殺される。そして容疑の目はグスタフに向けられるが、マダムDの遺族には莫大な遺産を巡って様々な策略を練る者もいた。

 

グスタフ・Hのスノッブながらも親近感を持ってしまうキャラクターは一度スクリーンに出てからは忘れられない名キャラクター。また少年ゼロのひたむきに働き、どんどんグスタフの信頼を得て行く姿はどこか未熟な自分と重なりながらも、応援をしたくなる。

 

この二人のコンビが、遺産、ナチス、そして淡いピンク色の恋模様などの様々な出来事を通して友情を越えた実の親子愛のような関係になっていく。

 

 

【感想】

幻とわかっていながらも、全力で生きる人達によって淡いピンク色に輝いていた名門、グランド・ブダペストホテル。

誰もが憧れるこのホテルは西欧諸国が力をつけ始め衰退に向かっていた中欧の最後の輝きを象徴する気がする。

 

そして実体の無い幻は無数の語り手によって作られるように、この話はグスタフ本人が語っていないのが面白い。グスタフの元にいた老後のゼロが過去を振り返りながら語り、それを聞いていた小説家が本にして、現代に生きる少女が本として読む。

マニフェストを明文化せず、本人の死後に周りの人間が語るとはまさに聖・グスタフお兄さん?

 

 

小道具一つ、カット一つ、そして紙芝居のような人形劇のようなこだわりの演出と先が読めない話の展開が見事にマッチする感じは同じ中欧のモーツァルトの音楽のような人懐っこさがある気がする。間違ってもベートーベンのようなガンガンと訴えて煽動するような音楽ではなくて、首尾一貫エンターテイメントに徹しているのが逆に潔くて新鮮だった。ノスタルジーに浸れてほっこりするけれど、見終わったあとはアクション映画を見たような爽快さもあっていい意味でサバサバしてて良かった。

 

初のウェス・アンダーソンの映画だったけど、この監督かなり気に入りました。

あのスイーツ、食べてみたい。