映画とドラマとファッションと

ブログを初めて早6年。平成生まれ、米国育ちの映画オタク。元パリコレブランド勤務で今はマーケターやってます。

『ゲーム・オブ・スローンズ』入門!登場人物3人の意外な共通点とは!?

史上最高、空前絶後、社会現象(残念ながら今は日本を除く)、ドラマ史、映像史に今後も燦然と輝くであろうドラマ、と言ったら大げさでしょうか。今回から3回に渡ってドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』をご紹介します。

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3回にわたってこの壮大なドラマについて紹介してます。是非第1回から読んで頂けると嬉しいです。

・その1『ゲーム・オブ・スローンズ』入門!登場人物3人の意外な共通点とは!? - 【ブログ】マーケターが追うポップ・カルチャー最前線

・その2『ゲーム・オブ・スローンズ』の圧倒的世界観!音楽・衣装・言語の作り込みが凄い - 【ブログ】マーケターが追うポップ・カルチャー最前線 

・その3サラリーマン必見!?『ゲーム・オブ・スローンズ』が描く理想のリーダー像 - 【ブログ】マーケターが追うポップ・カルチャー最前線 

僕自身今までたくさんの映画やドラマを見てきましたが、ここまで打ちのめされ、励まされ、興奮させられ、そして考えさせられた作品はなかなか無いです。日本ではまだまだ同志が少ない為、一刻も早くこの記事を書きたかったのですが、やっと良いタイミングを見つけました。先日エミー賞授賞式でこのドラマが作品賞を受賞した為、ありがたく便乗します! 

はじめに

先日第70回エミー賞授賞式がありましたね。

海外ドラマ界のトップを決める賞として位置づけられているエミー賞。今回のエミー賞ではシーズン7を迎えた『ゲーム・オブ・スローンズ』が作品賞を始めとする9つの部門を制覇し話題になりました。同ドラマのエミー賞制覇は今年に始まったことではなく、2011年にエミー賞にノミネートされて以来、通算で47賞の受賞を記録しています。エミー賞史上最も賞を受賞したドラマ、という点では先ほどの表現もいささか大袈裟ではないでしょう。jp.ign.com

ゲーム・オブ・スローンズ』の世界

さて、『ゲーム・オブ・スローンズ』は一言で言うとファンタジー物です。

中世ヨーロッパのような時代設定で、イギリスを模した大陸が舞台となります。

1つの季節が何百年も続く大陸、ウェスタロス。長い夏が続き、人々は平和に暮らしていたようですが、北からは不穏な噂が流れてきます。伝説と言われていた冬の魔物が現れた、と。一方、首都では王の側近が謎の死をとげ、これを機に玉座を巡る争いが始まろうとします。こんな具合で物語が始まるのですが、このドラマはファンタジー要素以上に「人間のエゴ」のぶつかりあいがこれでもか、と描かれます。高貴な理想を持つ人物もいれば、我が身の保身だけを考え、周りを陥れようとする奴もいる。悪そうな奴でも善が芽生える人もいれば、ひたすら悪事に突っ走る人もいる。良い奴が最後に救われるわけでもなく、悪い奴でもどんどん成功もする。 

そして敵味方、善悪問わずたくさんの登場人物が死にます。え!?ここでこの人死んじゃうの?と言う具合にとんでもなく予定不調和なドラマです。更に面白いのが、分かりやすい主人公らしき人物がいません。いわゆる群像劇という形式ですが、ネタバレにならない程度に主な登場人物を紹介しておきましょう。 

主な登場人物

・ジョン・スノウ

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北部の大名、ネッド・スタークの落とし子、ジョン・スノウ。

スターク家の血は引いていますが、正妻の子では無い為「Bastard(落とし子)」と呼ばれ、忌み嫌われながら、スターク家と過ごしています。寡黙ながらも剣の腕が立ち、誠実な人柄が血気盛んな戦士達の信頼を集めます。ジョン・スノウは女性ファンも多いですね。

・デナーリス・ターガリエン

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代々ウェスタロス大陸はターガリエン家という王朝が治めていました。

しかし、デナーリスの父親の代で王朝が変わり、ターガリエン一族はウェスタロスを追われます。虎視眈々と玉座の奪還を狙っている兄と共に隣の大陸、エッソスに亡命生活をしています。最初は兄に使われ、政略結婚として嫁がされるところから始まります。

デナーリス役のエミリア・クラークは最近公開されたスターウォーズ映画、『ハン・ソロ』への出演が記憶に新しいですね。

・ティリオン・ラニスター

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酒好き、女好き、読書好きなティリオンはウェスタロスでも最も裕福な家系のラニスター家の次男として産まれます。但し、小人として。ティリオンの出産と引き換えに、母親は亡くなってしまった為、父親からも姉からも忌み嫌われるという悲しい出自のティリオン。剣の力が物をいう世界では珍しく知性で戦うキャラクターでもあります。イギリス系俳優がほとんどですが、ティリオンを演じるアメリカ人、ピーター・ディンクレージは上流階級の英国英語を流暢に話します。ピーター・ディンクレージは今回のエミー賞で3度目の助演男優賞を受賞しましたね。

マイノリティの物語

この3人の登場人物には共通点があります。

正当な血筋を持たない落とし子、

男社会で女性として生まれた王女、

通常の身体ではない小人。 

マイノリティとしての彼ら、彼女らは現代人の僕達には想像もできないような差別や偏見と戦いながら文字通り「必死」に、死にものぐるいで、生きようとします。昨今世の中ではmetoo運動や人種差別の問題だったり先天的な物で差別されてしまう事に対する反発が見られます。『ゲーム・オブ・スローンズ』のこの主要な3人は正に、差別をされながらも理不尽で恐ろしい血と策略の世の中でも戦っています。同時に大河ドラマとしてのエンターテイメント要素もあるというなんでもありっぷり。もうここまできたら面白く無いわけがない。まだまだ魅力がありますが今回はここまで!

 

続く。 第二弾はこちらmichischili.hatenablog.com

第三弾はこちらmichischili.hatenablog.com

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極寒世界の渋いオヤジの戦い。カーハートが印象的な『ウィンド・リバー』

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2018年日本公開ーテイラー・シェリダン監督

 

暑苦しい夏にぴったり、「恐ろしさ」なんて言葉では形容できない自然(この場合雪)を畏怖する気持ちになる隠れた名作。観れる劇場が少ないのが玉に瑕。

是非口コミで広まって欲しい。アヴェンジャーズで共演しながらも、あまり活躍の場がないジェレミー・レナーと、エリザベス・オルセンの本領をこの作品では観れます。

 

 

とにかく撮影が素晴らしい。雪原の厳しさと時折見える美しさを広角でしっかり撮る一方、人や車が移動する時は、遠くから誰かが監視してる様に望遠で撮ってる。

テイラー・シェリダン、これが長編監督デビュー作って信じられないくらい老練さを感じました。 

また、ニック・ケイヴによる啼きの弦楽器の劇伴が、観る者に優しく手を差し伸べてくれます。(彼も子供を亡くしている)


Wind River (Snow Wolf original soundtrack) by Nick Cave & Warren Ellis

 

 

「運」では生き抜けない、それほど過酷な環境の中でもしっかりと生きようとする人間達の強さがラストの余韻として残る。同年に公開されたスリービルボードも似たテーマ(アメリカの田舎、少女の殺害、人種問題など)を描いているけど、断然こっちの方が映画としての完成度が高い。やっぱ監督・脚本のテイラー・シェリダンはセンスある。比較して観ても面白いかも?

michischili.hatenablog.com

P.S.

いつか自分もカーハートが似合う渋いオヤジになりたい。 

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世の中を良くするには遊ぶべし!『レディ・プレイヤー1』に込められたメッセージ

はじめに

前回に引き続き、 『レディ・プレイヤー1』についての考察です。

前編では『マトリックス』は「仮想の(偽りの)の世界から目覚めよ!」と視聴者を煽っているというところで終わりましたね。

 http://michischili.hatenablog.com/entry/2018/05/09/091003

では後編は『マトリックス』は「何から目覚めよ!」と煽っていたのか?からはじめます。あれ、レディプレイヤー1の話はどこに行った?と不安になった方、安心してください。後ほどちゃんと登場しますので。

 

シュミラークルとシュミレーション 

マトリックスの冒頭、凄腕ハッカーの主人公ネオのパソコンに『白いウサギを追いかけろ』とメールが届く場面がありますね。この時に主人公のネオは部屋を尋ねて来た者に、違法なデータかプログラムが入ったディスクを渡します。このディスクは、隠し収納が中についている本から取り出されます。

この本のタイトルが『シミュラークルとシミュレーション』

(Simulacura and Simulation)です。

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シミュラークルとシミュレーション (叢書・ウニベルシタス)

シミュラークルとシミュレーション (叢書・ウニベルシタス)

 

シミュラークルとは、虚像や模造品(コピー)といったところでしょうか。この本を書いたフランスの社会学者、ボードリャールは現代の消費社会は企業やメディアが決めたコピーや記号(ブランド)などで溢れかえってしまう、と批判しました。(分かりやすい例で言えばラグジュアリー・ブランドなどのロゴですね。ロゴが付いてるから価値があるのか。服や鞄としての価値は二の次なのか?)

 

この本をはじめとして、ボードリャールや、同時期のポストモダニスト達の考えは人文学や芸術に大きなインパクトを与えました。この考えをベースにした芸術運動は「シュミレーショニズム」と呼ばれています。『マトリックス』のテーマもこのボードリャールのテーマに近いです。僕達が当たり前だと思っている世の中は実は誰かに作られた嘘の世界なのだ、だから一人一人が目覚める必要がある!と。こう書いているだけでも、過激な考えだったんだなぁと思いますが、公開当時ティーンエイジャーだった僕はこれがカッコイイと思ってました。

レディ・プレイヤー1』の示す、仮装と仮想の向こう側

とはいえ、この2つの映画ではそもそも仮想の世界に対する前提が違います。

・『レディ・プレイヤー1』のオアシス⇨オアシスの中で、仮の自分として装って遊ぶ空間(仮装)

・『マトリックス』のマトリックス⇨そもそもこの世界が仮の世界だと知っている人がほとんどいない。皆、騙されている。(仮想)

そしてこの前提が変わった事が僕としては重要だと思っています。マトリックスから約20年、仮想世界との折り合いの付け方として提示された回答、それがレディプレイヤー1ではないか、と。上記の比較で、あえて仮装という言葉を使いました。ハロウィンは典型的な仮装ですね。最近、東京でもハロウィンがブームになっていますが、現代において仮装する事は遊び・娯楽の要素が大きいと思います。 

その遊びとは、『レディ・プレイヤー1』で描かれているように、場合によっては日常とは違う自分を引き出してくれる事もあります。現実世界ではアキラのバイクには乗れないかもしれない。でも仮でも(それが偽物でも)それに乗っている体験をする事(仮装する事)はポジティブな遊びであると。世の中コピーだらけでも、楽しんだもん勝ちじゃないか?と言っても良いかもしれません。 

シミュレーショニズムとシンディ・シャーマン

実はこのシミュレーショニズムの克服?は映画以外でも見られます。シュミレーショニズムを代表する1人のアーティストを紹介します。 1980年代にデビューをした、シンディ・シャーマンというアメリカの写真家がいます。

ハリウッド映画、ノワール映画、B級映画、イタリア映画などに見られる典型的な女性キャラクターを自ら模倣して撮影する、という作風のアンタイトルド・シリーズという作品で脚光を浴びました。このシリーズでは、「既存映画の中の女性像」を借りて、シャーマン自ら被写体になっています。 

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また2000年代にはピエロのイメージを様々なキャラクターや色味をモンタージュし(サンプリングに近いですが、サンプリングとは違い元ネタがわからない程切り刻んではり合わせる要素があります)、美の基準という物を問いかけています。

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そしてこのピエロもシンディ・シャーマン自身がピエロに仮装して被写体となっています。実はこのシンディ・シャーマン、数年前にルイ・ヴィトンとコラボレーションをしていますね。

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※このピンクのスーツを着てる人はシンディではないです※

消費社会は企業やメディアが決めたコピーや記号(ブランド)などで溢れかえってしまう事の批判から始まったシュミレーショニズム。しかし、そのシュミレーショニズムは、その運動を担っていた張本人の1人、シンディ・シャーマンによって覆された、とも見れます。シャーマンはボードリャールが批判していたであろうラグジュアリー・ファッション・ブランドを代表するルイ・ヴィトンとコラボレーションをしてしまった。これはもう皮肉でもなんでもなく、シュミレーショニズムを克服した象徴的な出来事だと僕は考えています。 

北風と太陽、あるいはプラトンの洞窟 

マトリックス』では、現実の世界では人間は機械に繋がれ、太陽もなく、美味しい食事もなく、人類を支配する機械と徹底抗戦をしています。でも、これが現実の世界だ!と言われても、絶望しかないですね。わざわざそこに行きたい人はよっぽどのドMです。『マトリックス』が北風だとすると、『レディ・プレイヤー1』は太陽ではないか、とも思うのです。コピーやブランドに支配されてる社会は偽りの(仮想の)社会だ。目を覚ませ!(煽り、北風、マトリックス)

一方、仮想であってもいいじゃないか。仮想の世界で学んだ事を現実に活かす事もできるでしょう?(遊び、太陽、レディプレイヤー1)いくら正しいことを言っても、煽るような言い方だったり、過激すぎると周りの人は聞く耳を持ってくれませんね。プラトンの洞窟の寓話でも、外の世界の存在を知らしめた人は洞窟の住人に殺されてしまいます。人を動かすのが目的であればやっぱり北風のやり方より、太陽の方がよっぽど効果があるんじゃないか、と思いました。 

一言でまとめると、世の中を良くするのは煽りより遊び

かもしれません。

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遊びこそ救いだ!『マトリックス』から19年、仮想現実の可能性を描いた『レディ・プレイヤー1』

スピルバーグはやっぱり凄かった。日本発のキャラクターがたくさん出てる事は知られてると思いますが、この記事ではあえてキャラクターの事は書きません。むしろ、この映画の描く仮想現実ってある意味『マトリックス』への19年越しの回答なんじゃないか?という仮説を紹介させていただきます。

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レディ・プレイヤー1』と仮想現実

レディ・プレイヤー1の世界では、ハリデーという天才プログラマーが作ったオアシスという仮想現実の世界が登場します。どうぶつの森や、セカンドライフの進化版でしょうか。オアシスはもはやインフラと言っても良い程世の中に普及しています。この仮想現実の中で、人は仮の自分の姿でレースをしたり、踊ったり、はたまた賞金稼ぎのゲームをしたりします。映画は、「オアシスの中に3つの謎を隠した。その3つの謎を解き明かした者に、オアシスを引き継いでもらいたい」とハリデーが遺言を残して亡くなるところから始まります。主人公のウェイドは、このオアシスの中と、現実の世界を行ったりきたりする中で、仲間と力を合わせて謎を解く、というストーリー。このストーリー自体は至って普通ですが、仮想と現実の魅せ方がやっぱりスピルバーグは上手い。そして何よりもメッセージに感動しました。

 『レディ・プレイヤー1』では現実逃避として、仮想の世界で遊ぶ事で救われる人を描いてます。仮想の世界で擬似的になりたい自分になったり、やり残した事をやってみたり、誰かに認めてもらったりする。そうする事で息抜きになる人もいれば、大袈裟に言えば救われる人もいる。これは映画でも、ゲームでも、小説でもそうですね。(もちろん負の側面として、仮想の世界にのめり込みすぎで、現実の生活が破綻するほど課金してしまう人もきちんと描いています)  

でもやっぱり美味い飯は現実でしか食えないし、普段生きる世界も大切。というメッセージを示した『レディ・プレイヤー1』。ここでは仮想と現実、それぞれの役割りと補完関係をきちんと描き、アドベンチャーとしてまとめたのは流石スピルバーグ!と思いました。 僕は『レディ・プレイヤー1』を観終わった後に、これは似たテーマを扱った映画『マトリックス』への回答とも捉えられると思いました。 

マトリックス』と仮想現実

The Matrix [Blu-ray]

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マトリックス』の公開はもう19年も前なんですね。感慨深い。この映画は、主人公達が当たり前だと思っていた世界が、実は虚構の仮想の世界だ、というテーマがありました。未来の人類は機械に支配され、マトリックスという仮想の世界にいると思い込まされているというショッキングな内容。

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主人公、ネオが目覚めた「現実の世界」では人類対機械の大規模な戦争が行われています。そこでは機械が人間を電池のように扱う、というシーンが描かれています。この「現実の」世界(機械に支配された未来の世界)では太陽光が地球に届かなく、人類も機械の支配から隠れている為、まともな食事は残っておらず、お粥のような粗食だけしか残っていないです。

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*現実の世界の食事

一方、登場人物の1人が仮想の世界でステーキを食べるシーンがあります。人類を支配する為に機械が作った仮想現実、マトリックスの中ではステーキの味や食感を本物らしく再現して、あたかも本当に食べてるかのように錯覚させています。 

上:マトリックスの中(仮想)での食事

下: 機械に支配された世界(現実)での食事

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 この映画は、目を覚ませ!と視聴者を煽ります。実際に監督達が製作中に聴いていた曲は文字通り目を覚ませという曲で、その曲を演奏していたのが90年代を代表する過激なバンド、Rage Against the Machine(レイジ・アゲンスト・ザ・マシーン=直訳すると機械に対する怒り)です。

RAGE AGAINST THE MACHINE

RAGE AGAINST THE MACHINE

 

www.youtube.com

 彼らのデビューアルバムのジャケットは、ベトナム戦争に抗議する為に焼身自殺を図った僧侶の写真を使うというかなり過激なモノ。この曲は映画のエンドロールにも使われてとても印象的でした。では、『マトリックス』では何から目を覚ませと煽っているのでしょうか?そしてそれがどうレディ・プレイヤー1と関係するのか?後編に続きます。

michischili.hatenablog.com

 


映画『レディ・プレイヤー1』30秒予告(世界大ヒット編)【HD】2018年4月20日(金)公開

 

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初詣の起源はマーケティング?文化とマーケティングの話

はじめに

いつもブログをご覧頂きありがとうございます。

ここ数年、ちょっとずつの更新でしたが、洋服屋による映画解説を行なってました。ただ、自分の興味の範囲が広すぎる為、映画やファッションに留まらず気になったポップカルチャー関連の話題を色々と紹介し始めました。 

そんな時にふと見つけたブログがありました。

karasimentai.hatenadiary.jp

マーケティングとは文化を作ること?

マーケティングは需要を作る事、とは一般的な認識だと思います。ただ、上記のブログでは更に一歩踏み込み、母の日や父の日などを例に「その文化は人を幸せにするのか」がポイントである、と書いてありますね。文化には喜びや、楽しさ、または前向きな要素が必要とも言えます。そうするとポップカルチャーとは、現代の人は何に喜び、どう楽しむのかという「人を幸せにする」事例の宝庫だと僕は思います。ポップカルチャーではないですが、マーケティングによって作られた文化の身近な具体例を一つ紹介しましょう。

初詣とマーケティング

 

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鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った (交通新聞社新書)

 この本の著者によると、江戸時代には「初詣」という文化は無かったそうです。

(初詣という文化はおろか、言葉すらなく、あったのは新年になったら近所の寺社へお参りに行こうという割と気楽な物だったようです。)「初詣」は明治時代以降に出現した、鉄道各社、新聞社、大衆の三つが揃ってから生まれた物です。鉄道会社が競うように新聞広告を打ち、各社の沿線の寺社への「初詣」を促しました。何年にも渡り、ライバル社との値下げや割引合戦などを繰り広げ、いつの間にか川崎大師や成田山などに「初詣」客が押し寄せるようになり、現代の初詣の原型ができたそうです。これは一例ですが、今とはなっては正月の風物詩であり「文化」である初詣も、元は鉄道会社の生み出した新たな「市場」であり、初詣客は新たな「顧客」とも言えますね。 

では文化とはなんぞや?

ではここでいう「文化」(=カルチャー)とはなんのことか。便宜上ここでは文化とは余裕や余剰から生まれた「遊び」と定義して起きます。(文化人類学などで、狩猟採集型社会から農耕型社会に移行した際に様々な地域で余剰が生まれ、文化が芽生えたことなどは定説となってます。)過去の僕の記事から、若者達の遊びがどう文化として定着したかご紹介しましょう。 

60年代には、革ジャンやハーレーを着る人達に対するカウンターとして、M-51を羽織り、ヴェスパを乗り回したモッズ達が登場。当時はビートルズもモッズ・ファッションに身を包み、ポール・スミスにも見られるように今ではファッション・スタイルとして定着しましたね。

michischili.hatenablog.com2018年ではロックは旧世代の音楽として若者には支持されなくなり、人種を問わず北米ではヒップホップとR&Bが現在進行形でポップ・カルチャーの最前線として若者に最も支持されているジャンルとなっています。元々ある音楽をサンプリングし、ビートを抽出しラップを乗せるというヒップホップ・カルチャー。換骨奪胎の遊びの文化は今やラグジュアリー・ファッション・ブランドがこぞってすがるマーケティングの手法として広まってます。 

michischili.hatenablog.com

 

そうすると、新しいマーケティングを考える時には、新しい遊びを追いかける事こそ必要なのではないか、と僕は思うのです。そして新しい遊び(=文化)こそ、ポップ・カルチャーの本質なのではないか、と。 このブログでは、そういったポップ・カルチャー(文化)とマーケティングの解説をしていきたいと思います。これからの新しい文化を作っていく人達、企業でマーケティングに携わる人達、そして誰よりも、同じ時代に生きるポップ・カルチャー好きの仲間の皆様にとってのガイドマップとして読んで頂ければ幸いです。

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『ディファイアント・ワンズ』で学ぶヒップホップと起業家精神

Netflixで配信中のドキュメンタリー『ディファイアント・ワンズ』。後編の今回はヒップホップと起業家精神についてと、最後には僕の考察もご紹介します。 

※この記事は前編後編、2回に分けてお送りしております。前編はこちら。
michischili.hatenablog.com

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Appleを動かした2人の天才。音楽オタクが世界を回す『ディファイアント・ワンズ』

AppleによるBeats by Dreの買収が30億ドルと、Apple史上最高額の買収となった事を覚えてる方もいらっしゃるでしょう。今回紹介するのはそんなBeats by Dreを立ち上げた2人の天才を追ったドキュメンタリー、Netflixによる『ディファイアント・ワンズ』です。この作品はBeatsを創業したJimmy Ivone(以下、ジミー)とAndré Young( 通称Dr. Dre、以下ドレー)の半生の振り返りでもありながら、90年代以降の音楽とテクノロジーの流れも学べる作品です。

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※この記事は前編後編、2回に分けてお送りしております。後編はこちら。

ヒップホップを中心とした音楽業界の話でもありますが、ジミーのマーケティングの天才っぷりと、ドレーのプロデュースの天才っぷりが描かれていて、仕事の面でも刺激になります。ドキュメンタリーシリーズとして、全編4話(各50分程です)配信されてますが、一気見してしまいました。この2人と音楽のエネルギーが詰まった作品です。 

ジミー・アイオヴォンとドクター・ドレー

 

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ジミー・アイオヴォン

1953年ニューヨーク、ブルックリン。イタリア系移民の家庭に生まれたジミー。

レコーディングスタジオの床拭きから始まりますが、ピンチヒッターとしてエンジニアになりなんとジョン・レノンのレコーディングを担当。

それ以降、パティ・スミスブルース・スプリングスティーンU2等といった錚々たるミュージシャンのプロデューサーとして名を挙げていきます。

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アンドレ・ロメル・ヤング

1963年、カリフォルニア・コンプトン生まれのアフリカンアメリカンのドレー。過激な言動で西海岸ヒップホップを一躍有名にしたグループNWA出身。後にミュージシャンとしてソロデビューをするだけでなく、2pacスヌープ・ドッグエミネム、ケンドリック・ラマーといった数々のヒップホップミュージシャンのプロデュースを手掛ける。と、生まれも育ちも、ジャンルも違うこの2人がいかにして挫折や成功を乗り越えてきたが描かれています。 多くのミュージシャン、レコード会社の重役達のインタビューだけでなく、当時のレコーディングやライブ、PV等の映像が惜しみなく使われて、とてもリズミカルに編集されています。 

レーベル設立と2人の出会い

さて、この2人はどう出会ったのでしょう。

ロック畑出身で、ヒップホップに詳しくなかったジミー。現場からは少しずつ退き、よりビジネス面へとシフトし始めていた頃。インタースコープというレーベルを立ち上げた時にドレーと出会います。FBIや世論を敵に回すほどのスキャンダルになったNWAを脱退したばかりのドレーは、満を持して作ったソロ・アルバムを売り込んで回っていましたが、風評被害もあったのかどこにも断られてばかり。

しかし、一聴したジミーは度肝を抜かれたようです。

ジミー「これ、誰がエンジニアとレコーディングやったの?」

ドレー「誰って、全部僕だよ」

ジミー「え?こんな音、今まで聴いた事ないぞ」

こちらの曲をどうぞ

Nuthin' but a G thang (feat. Snoop Dogg)

Nuthin' but a G thang (feat. Snoop Dogg)

  • provided courtesy of iTunes

直ぐにドレーはインタースコープ社と契約。周囲の予想を裏切りこのアルバムは大ヒット。2015年の時点でアメリカだけで累計570万枚売れた大ヒット作となりました。(日本で歴代最も売れたアルバムが宇多田ヒカルのFirst Loveで765万枚。その次がB'zのベストアルバムで513万枚と考えると、日本でB'zを聞く人達くらいの規模の人がドレーを普通に聞いていた、ということでしょうか。) 

このアルバムは数字だけでなく、中身も革新的でした。作中でも言及されていますが、カリフォルニアは車社会です。音楽を聴くスタイルも、ヒップホップの生まれ故郷、ニューヨークとは違い、各々の車に搭載されたサブウーファーの(低音を響かせるスピーカー)響きが重視されていました。

ドレーはそこに目をつけプロダクションを進めます。結果、スローテンポで、低音が強調されたリズムにシンセサイザー等の音が乗った、明瞭な新しいヒップホップサウンドでした。これは後に多くのフォロワーを生むG-Funkというサブジャンルの代表作として知られるようになります。

Chronic

Chronic

 

ドクター・ドレーの時代

このアルバムの成功以降、ドレーは他のミュージシャンのプロデュースでも手腕を発揮します。独特の声質とフロウで西海岸のスターになったスヌープ・ドッグ

Who Am I (What's My Name)?

Who Am I (What's My Name)?

  • provided courtesy of iTunes

 東西ヒップホップ抗争の中心に居ながらも当時最高の詩人としてヒップホップ界の注目を浴びていた2pac

California Love

California Love

  • 2Pac
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 東西抗争の悲劇的な終わりから、次のステップへと踏み出そうとした時に出会った白人の若手天才ラッパー、エミネム

My Name Is

My Name Is

  • provided courtesy of iTunes

 そしてこれらのドレーの活動は、ジミーによって自由が保証されていたからこそ、可能でした。 一方でジミーも現場からは遠ざかりましたが、ドレーと負けずとも劣らない90年代を代表するミュージシャンを見つけていました。

それがナイン・インチ・ネイルズの中心人物、トレント・レズナーでした。

Downward Spiral

Downward Spiral

 

次回へ続く

michischili.hatenablog.com

 

※ちなみに、ヒップホップ以外でも欧米の音楽業界・テクノロジー関連に興味があるそこのあなた。良かったらこちらの電子音楽の祭典、MUTEKの参戦記も書いたので是非ご覧下さい!このフェスの昼間のセッションでは、海外の様々な電子音楽のフェスの運営の話など僕が見渡した限りここまで詳細に書いてあるメディアはないと思える仕上がりなので、読んで頂けると嬉しいです!michischili.hatenablog.com

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ルイ・ヴィトンの新デザイナー、ヴァージル・アブローって誰?

 

街中で皆様見かけた事は一度くらいはあると思います、このブランドoff white。高級ストリート・ウェアというコンセプトで若者に人気のブランドです。

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この度、Off-Whiteの設立者であるヴァージル・アブロー(以下、ヴァージル)が、前任者キム・ジョーンズに代わり、ルイ・ヴィトンメンズウェアのアーティスティック・ディレクターに就任しました。 Off-Whiteのデザイナーというのは知っていたものの、それ以外はあまり彼の事をそこまで知らなかったので、この際調べてみました。 

news.yahoo.co.jp

 

このニュース、単なるファッションの話題に見えますが、このニュースの背景を理解すると、ポップ・カルチャーの最前線が見えてきます。ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、ジャンルを跨いだ新しい交流が怒涛のように生まれています。ヴィトンやラグジュアリーブランドのマーケティング的視点から考えると、ヴァージルの起用はブランディングの一環とも捉えられますね。ではヴァージルって何者なんでしょうか?

はじめに

長らく更新が滞ってしまいましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?これまで映画でファッションを解説する、という視点でブログを書いてました。とは言え、自分の興味や守備範囲が広すぎる。この際、ポップカルチャー全般✖︎マーケティングのガイドマップのようにしよう、という事でリニューアルをしました。もっと言うと、最前線のポップカルチャー≒最前線のクリエイティブな人の集まりとも見れます。最前線を追いかける人の参考になれば、と思います。 

ヴァージルと現代アート

ヴィトンのクリエイティブ・ディレクター就任に先立ち、ヴァージルが3月16日より広尾で初の個展を開催してました。という事で、今日会期終了ですが先日駆け込んできました。この広尾にあるカイカイ・キキ・ギャラリー、現代アーティストである村上隆氏が運営してるギャラリーです。こちらはヴァージルと村上の共同で展覧会を開催した時の画像。 

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注)真ん中はジャスティン・ティンバーレイクです。 

 

 村上氏曰く、「ヴァージルは単なるデザイナーではなく現代アートにも通じる物作りをしている」との事でした。展覧会を見た限り、正直「現代アート」として評価されるのかちょっと疑問を持ってしまいましたが、「消費社会」への言及と「企業ロゴ」の多用はある種、現代的だな、と思いました。ちなみに村上隆と言えば、日本画をルーツにしながら花柄のキャラクターやドクロなどをモチーフに描く事で国内より海外で人気のアーティストですが、村上隆も実はLVと仕事をしていました。

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ヴィトンではここ数年、積極的に外部のデザイナーやアーティストを起用した限定商品の企画を行なっています。こういった積み重ねの上で、外部のクリエイターの起用が効果的であると判断されたのでしょう。限定商品だけでなくメンズウェア全体の責任者としてヴァージルが選ばれた理由にはこういう背景もあるようですね。

ヴァージルと音楽

ヴァージルは現代アートだけではなく、音楽業界にも大きな繋がりがあります。カニエ・ウェストというヒップホップ・ミュージシャンを皆様ご存知でしょうか。 

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左)ヴァージル・アブロー

右)カニエ・ウエス

 

カニエ・ウェストは2000年代〜今に至るまで、ヒップ・ポップのみならずポップ・ミュージックの世界では最先端の音楽を作る事で知られています。本人自身ラップをしたり歌ったりしますが、彼はソウル・ミュージックをサンプリングした甘く、どこか懐かしさを感じさせるトラック(曲)作りに定評がありました。デビュー以降も様々な音作りにチャレンジしているクリエイターです。 

ヴァージルとカニエは同じシカゴ出身。しかも2人ともフェンディにてインターンをしていました。ヴァージルは以前カニエの設立したファッション・ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めていました。そして今では幻となってしまいましたが、カニエもヴィトンとコラボレーションをしていました。

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そしてカニエの、3枚目のアルバムジャケットを手掛けたのは、そう村上隆です。  

Graduation

Graduation

 

最先端の音楽と現代アートもこういう風に有機的に繋がっているんですね。 

ヴァージルと建築

ヴァージルはところでどこでデザインについて学んでいたのでしょうか。調べると、アメリカのイリノイ工科大学で、建築を学んでいました。そこでレム・コールハースに学び、プロダクトのコンサルティングも学んだそうです。このレム・コールハースは建築界では建築家の建築家とも言えるような存在で、徹底したリサーチから提案される新しい建築の在り方は建築家だけでなく多くのクリエイターにも影響を及ぼしています。

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左)ミウッチャ・プラダ

右)レム・コールハース

そしてコールハースはヴィトンとは競合に当たる、プラダマーケティングに長年携わっています。具体的にはミラノコレクションの会場設計や、プラダ財団や一部店舗の設計も手掛けていますし、プラダのプロジェクトをまとめてこんな本も出版しています。

Rem Koolhaas: Projects for Prada

Rem Koolhaas: Projects for Prada

 

建築側の視点ですと、こちらの美術手帳に掲載されているヴァージルのインタビューがより詳しいです。ファッション・ブランドのインテリアデザインについて詳しい建築家、浅子佳英さんがインタビューをしておりまして、こちらも勉強になります。

ヴァージル・アブローが語る自身の「DNA」。世界初個展「”PAY PER VIEW”」で見せるものとは?|美術手帖 

最後に

いかがでしたか?このように、ポップ・カルチャーの最前線では、ファッション、アート、音楽(ヒップホップ)、建築などと、様々なジャンルを超えて新しい交流が生まれています。そして多くのグローバル企業のマーケティング企画ではこう行ったポップ・カルチャーやストリート・カルチャーの人間に仕事を依頼するケースが年々増えています。日本だとまだまだヒップホップを身近に感じられず、聞き慣れていない人もいるようです。今後このブログでは、ポップ・カルチャーがいかに様々な分野のクリエイターや企業のマーケティングと繋がっていくのかを紹介していきたいと思います。

 

興味がある方はこちらの記事もどうぞ!ヒップホップ発のヘッドホン・ブランドが、Apple史上最高額で買収されるに至った経緯を描いたドキュメンタリーを紹介してます。 

michischili.hatenablog.com

 本日も最後までご覧いただきありがとうございました。コメントの書き込み、その他SNSでのシェアなどして頂けるととても嬉しいです!それではまた!

 

シーズン性がある異色の古着屋、Ambivalence

 

前回のブログでもご紹介させて頂いた知人の古着屋ambivalence 。

 

michischili.hatenablog.com

 

古着屋なのにシーズン毎にルックブックを作っていて、これがカッコいい!

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代官山の新名所。古着屋Ambivalence

師走ですね。

 

4月以降の更新となってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

僕は今年始めたカメラが楽しくて、ブログから少し遠のいてしまってました。来年はもう少しマメに更新します。 

映画もいくつか観ましたが、今回はとあるお店をご紹介致します。

 

 

Ambivalence

 

(ここではルックブックで使われた画像が見れます)